エレメント・ヴァイス

PLACEText: Andrew Sinn

ベア・デーメルと、カーステン・フェラーという二人組がいる。どうやら彼らは、最近マルチメディアを扱う会社を発足したらしい。ベアは学校でグラフィックデザインを勉強したが、だからと言ってどこかの会社に就職して、雇われデザイナーとしては働きたくないという人物。一方、カーステンは、商業プログラマーとして活躍後、ウェブに関連したプログラミングを再度勉強した経歴を持つ。エレメント・ヴァイスという名前で活動する彼ら。サイトもあるので、もし良ければこちらもチェックを。

今年二人は引っ越しをした。今までは普通の家に住んでいたのだが、今度の新居はなんとハウスボート。市が管理している、使用料無料の港に浮かぶハウスボートだ。周りにあるのは、ちょっとした水路、倉庫、そして何槽かの他のボートだけ。彼らのハウスボートが作られたのは、1924年のこと。その後、商品を船から倉庫に輸送する会社がこのボートで活動していたとか(これはまだ、コンテナーが登場する前の時代のことになる)。

ボート内の生活居住空間の広さは100m2。1階には3つ部屋があり、最初の部屋は、窓が3つに木製の壁という内装。かなり天井が高いこともあり、ここは彼らのアトリエとして使用されている。ドアの向こうに広がるのは、美しい水面だ。その隣の部屋は、何とも居心地の良いキッチン。そしてその向こうには、居間が続いている。居間にある階段を昇ると、そこにあるのは寝室だ。

僕が彼らを訪ねた時、天井から下げらているランプが傾いているのに気が付いた。これはなぜかというと、その時はちょうど干潮の時間だったから。ボート自体が水底に着いてしまっている状態なので、ランプも傾いてしまうのだ。傾いているのはランプではなくボートの方。それに気付かなければ、ランプの調子がおかしいのではないかと思わずどぎまぎしてしまうおもしろい体験だ…。

「ボートでの生活」と聞くと、何だか牧歌的な風景を想像してしまいがちだが、実は予想以上に大変だとか。2800リットルの水タンクと、1600リットルの燃料タンクがあるのだが、常にこれらの残料をチェックするのは必須。大体月に1度のペースで、他のボートがやってくるのだが、アンラッキーな場合は、シャワーが使えない時もあるとか。暖房も頭が痛い問題のひとつ。1枚壁のため、水面を通じて直に冷気が家に運ばれてくるからだ。その対策としてベアとカーステンは現在、ネットを通じて、「ODLO」というあったか下着と何かを交換できないか奮闘しているらしい。

Text: Andrew Sinn
Translation: Sachiko Kurashina

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