イヴ・サンローラン美術館

PLACEText: Wakana Kawahito

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ここ数年、立て続けに映画化され、映画界でも一躍注目の人となったイヴ・サンローランは、フランスを代表とするモードの帝王だ。彼の個人美術館が2017年10月、パリにオープンした。美術館となった場所は、元々イヴ・サンローラン財団の事務所であり、イヴ自身が30年間アトリエ兼オフィスとして使用していたゆかりのあるところ。貴族の家を改装したこの美術館では、パリらしいエレガンスが感じられるイヴ・サンローランのクリエーションに触れることができる。

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美術館の中でも最も印象に残る部屋は、最上階奥のアトリエ。当時の面影のままに残されており、イヴ・サンローランが実際にここでデザインを考えたり、モデルのフィッティングを行ったりしていた。まさに、ブランドの心臓部だった場所だ。部屋の一番奥がイヴの席で、机の上には彼が実際に描いたデザイン画や使っていた仕事道具が残されている。壁一面の本棚には、イヴがデザインのインスピレーションを得ていた、ピカソやモンドリアンなどの画集や、各地の民族衣装の本が並べられている。この部屋の隅々に残されている生地やリボン、ボタンなど数々の服飾小物を見ていると、今この瞬間にイヴ・サンローランがドアを開けて入ってきて、デザインの指示を出す。そんな想像が掻き立てられる。

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美術館内には、5000枚以上のオートクチュールのコレクション、15,000点以上のアクセサリー、実際に制作されたデザイン画や指示書の数々など、貴重なコレクションが約2万点展示されている。デザイン画やパターンナーへの指示書からは、なかなか見ることができない制作の過程を見ることができ、クリエーションの源泉に触れたような気持ちで、高揚感を覚える。

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コレクション作品に近づいてみると、ビーズはまるで宝石のようで、刺繍は絵画のよう。その見事な職人技には、思わず息を止めて見入ってしまうほど。オートクチュールとは、それぞれの分野の最高の職人技の集大成であり、フランスの物作りの最高峰ともいえよう。一枚の服は着れるアートなのだ。

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50年以上経った今見ても、新鮮に感じるデザインの数々は、いかにイブ・サンローランというクリエーターの才能が普遍的なものかということを再確認させる。また、館内の映像には、公私にわたるパートナーであるイヴとピエール・ベルジェにまつわるエピソードや過去のインタビューもあり、この2人の関係性無くしてブランドの成功は有りえなかったというのがよく分かる。

イヴ・サンローランの映画を見てから行くも良し、美術館に行ってから映画を見るもよし。ファッションにかけた一人の男の人生、オートクチュール全盛期の仕事、デザインとは、ファッションとは、に触れながら、改めてイヴ・サンローランの凄さを感じて欲しい。

Musée Yves Saint Laurent
住所:5 avenue Marceau, Paris 16ème
開館時間:11:00〜18:00 (金曜日は19:00まで)
休館日:月曜日
http://www.museeyslparis.com

Text: Wakana Kawahito
Photos: Wakana Kawahito

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