ニーゼと光のアトリエ

THINGSText: Taketo Oguchi

『患者は《クライアント》よ。彼らのために私たちは働くの』

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「身体と同じように精神にも自己治癒力がある」というユングの言葉に共感し、心理療法の常識に屈することなく、愛と芸術で統合失調症の患者の心を癒したブラジルの女医、ニーゼ・ダ・シルヴェイラの奇跡の実話をもとに描かれた映画「ニーゼと光のアトリエ」。国際的にも名高いリオデジャネイロ国際映画祭で観客賞を受賞し、第28回東京国際映画祭ではグランプリと最優秀女優賞をダブル受賞した本作の国内の映画館での上映がいよいよ始まった。

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1940年代、ブラジル。ひとりの女医が精神病院の門をたたく。彼女の名はニーゼ。そこでは毎日のようにショック療法などの暴力的な治療が行われていた。患者を人扱いしない光景を目の当たりにし、ニーゼは言葉を失う。男性医ばかりの院内で彼女が身を置けるのはナースが運営する作業療法部門だけだった。そこでニーゼは、患者を病院の支配から解き放ち、彼らに絵の具と筆を与えて心を自由に表現する場を与えようと試みる…

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実在の女医ニーゼに扮するのは、地元ブラジルにおいて数多のTVドラマや映画に出演する名女優、グロリア・ピレス。構想に13年、撮影期間4年をかけて作り上げた、ドキュメンタリー出身のホベルト・ベリネ監督が放つ渾身の一作だ。舞台となっている病院の建物や、劇中に登場する芸術作品は本物が使用されている。患者を演じた俳優たちの演技も素晴らしい。

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ジャン・デュビュッフェがアール・ブリュット(生の芸術)を提唱する以前に、アートセラピーを実践したニーゼの信念と先見性。「無意識」を表面化させた芸術表現に心揺さぶられることがある。芸術は常に時代とともに「常識」を覆す歴史を繰り返してきた。私たちは「常識」に捉われすぎてはいないだろうか?「無意識」を恐れずにいられるだろうか?

映画は、芸術や人間の本質、人生、そして人間のあり方への問いを、私たちに投げかける。劇中でニーゼが語る『人には一万通りの生き方がある』というアルトナン・アルトー(フランスの詩人)の言葉が印象に残る。エジソンは電球を発明するために、一万回もの実験を重ねた。人間には無限の可能性と想像力がある。

現在、ユーロスペースを皮切りに全国順次ロードショー中だ。上映スケジュールは公式ウェブサイトで。

ニーゼと光のアトリエ
制作国:ブラジル(2015年)
上映時間:109分
監督・脚本:ホベルト・ベリネール
主演:グロリア・ピレス
配給:ココロヲ・動かす・映画社 ◯
http://maru-movie.com/nise.html

Text: Taketo Oguchi

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