モエレ沼公園

PLACEText: Shinichi Ishikawa

アートに関心のある道外の人に札幌の感想を聞いてみると、『札幌は凄いね。大通公園にはイサム・ノグチのオブジェはあるし、モエレ沼公園に芸術の森、こんな大規模なアート施設が都市部に隣接しているところは国内でそんなにないよ』とよく聞く。地元の魅力というのそこで生まれ育つと、なかなか気がつかないことかもしれない。

モエレ沼公園は世界的な彫刻家、イサム・ノグチのマスタープランに基づき、公園も彫刻のひとつというコンセプトで設計された。札幌の市街地を公園や緑地で包む「環状グリーンベルト構想」の計画のひとつである。今年、モエレ沼公園は全面完成した。そのため公園自体に様々な催しや、札幌芸術の森では大規模な展覧会が開催されている。今回、改めて大通公園にあるイサム・ノグチの有名な滑り台オブジェ「ブラック・スライド・マントラ」から話を進めていこう。


「ブラック・スライド・マントラ」札幌大通公園

大通公園は札幌の中心部を南北に分ける大きな公園。「札幌雪祭り」の会場でもある。そこの8丁目にイサムノグチが設計した滑り台「ブラック・スライド・マントラ」はある。雪の中でも映えるように黒い色にしたという。緑の芝生の中に立つこのオブジェは強い存在感を持っている。アバンギャルドでもある。しかし不思議な安心感を感じさせ子供たちのよき遊び場になっている。


「エナジー・ヴォイド」札幌芸術の森

札幌芸術の森美術館開館15周年記念、「イサム・ノグチ展〜ゼロからほとばしるエナジー」に行ってみる。イサム・ノグチの展覧会は本会場では二度目であるが、前回は「和」の精神にスポットを当てた展示に対して、今回は、公園や遊戯場を主とした環境彫刻、空間造形に着目。

出品点数はおよそ45点。その過半数がニューヨークのイサム・ノグチ財団の所蔵品でさらに約半数が本邦初公開。高さ3.6メートル、重さ約17トンにも及ぶ巨大な石彫作品「エナジー・ヴォイド」が会場外の入口の池の水面に浮かぶようにに配置されていて注目を集めていた。大通公園の「ブラック・スライド・マントラ」と同じ黒一色のオブジェであるが、同様に不思議な安心感や、「和」のティストを感じる。そこのあたりがイサム・ノグチの作品が世界的な評価を受けた理由ではないかと考える。

展示会場に入るとモエレ沼公園全体の模型がある。公園全体を見てみるとイサム・ノグチが、公園自体を彫刻と言った意味がよく分かる。パビリオンのひとつひとつが個性があり魅力的で、かつ配置が美しい。会場を進むと公園などのパブリックな場所に置くことを想定したオブジェが並び、公共施設への強い関心を改めて確認することができた。

本展示は8月28日(日)まで開催されているので、「和」の精神の作品シリーズとはまた違った面をみせるイサム・ノグチを見てほしい、これを機会に「パブリックな場所=公園」のありかたを考えてみたらどうだろうか。

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