チカリシャス

PLACEText: Rei Inamoto

「デザートをデザイン」。なんだかこのフレーズに、興味をそそられた。デザイナーである僕でも今までに見たことのないこの単語の組み合わせに出会った時、好奇心が湧いた。

チカリシャスは、ニューヨークに去年オープンした、“デザートバー”(これもまた珍しい単語の組み合わせだが)。ほんの20席ほどが並ぶこの “バー” は、着実に人気を上げてきている。もし夜に行こうとすれば、特に週末は、デザートを食べるのに20〜30分待つことは覚悟しなければならない。

もうお気付きだろう。そう、ここはデザートだけを扱う“バー”なのだ。

「チカリシャス」という名前は、2人いるオーナーの一人、チカ・ティルマンから取ったものらしい。このデザートバーは、デザート専門店でデザートしか置いていない。興味深いのが、コースメニューというものがあり、その内容がデザートの前菜(もちろんこれ自体デザート)、メインデザート、プチ4種盛り合わせ(通常のレストランであればこれが “デザート” にあたるのだろう。)となっている。また、デザートと一緒に楽しめるワインリストもあるので、これもおすすめ。このバーのオーナー達は、ユーモアやエンタテイメントのエッセンスを加えつつ、デザートととても真剣に向きあっている。

店内は、オーナーでもあるシェフ2人がデザートを作る様子を、目の前で見ることのできるオープンキッチンになっていて、日本のような雰囲気も持っている。すし屋のように、2人のシェフが、完成してすぐに食べられてしまうデザートを丁寧に、そして堂々と作り上げていく。皮肉にも、それがデザートの運命なのだ。

このデザートバーで、最も興味を惹くところはまず、「デザートをデザイン」というコンセプトだ。実際このバーを訪れてみて驚いたのは、彼女たちのメインとなる作品(デザート)だけではなく、そのスペース全体に行き渡っている純粋で洗練された美学。それはまさに彼女達が作りだすデザート自体にも表れている。

ChikaLicious
住所:203 East 10th Street, New York, NY 10003
TEL:+1 212 995 9511
info@chikalicious.com
https://www.chikalicious.com

Text: Rei Inamoto
Translation: Naoko Fukushi
Photos: Rei Inamoto

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