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クロスターノイブルク

PLACEText: Christina Merl

ウィーンにも太陽の日ざし溢れる夏がやって来た。暖かいとやはり過ごしやすい。しかし、私達の目の前には仕事があり、簡単に田舎や海辺に行くことができないのが悲しい現状だ。そんな人たちのために、街の予定は催し物でいっぱいだ。木漏れ日が降り注ぐ庭や公園、プールやドナウ島でのフェスティバル…。中でもこのドナウ川に浮かぶドナウ島は、ウィーン市内では最大規模のレクレーション広場で、夏の間はもっとも人で賑わう場所だ。

しかし、そんなドナウ川の喧噪を離れると、意外にも穴場的なスポットがいくつかある。クロスターノイブルクは、ウィーン市民にとっては週末にちょっと脚を運び、リラックスした時間を過ごせる場所だ。クロスターノイブルクの川の畔に、現代的な小さな家に住む30歳のローマ人男性がいるのだが、彼によると、朝目を覚ます度に、自分は違う世界へ迷い込んでしまったのではないかと疑ってしまうほどだそうだ。

ここに、そんな家を低予算で建ててしまった建築家のグループがいる。先に述べたローマ人男性の家を建てたのも彼ら。トーマスとクラウスという。常に自分達の作品には自信を持っているという彼ら。どこにでもあるような川辺に、傑出した小屋を建てるのは彼らの長年の夢だったとか。写真からも、どれだけ彼らが素晴らしい家を建ててきたのかが伺えることだろう。

その評判はすぐに広く知れ渡り、そのローマ人男性の型破りな家も、地上1.7mの場所に建設。敷地面積は35m2。開放感のある居間、台所、風呂場を1階に設置し、2階に寝室を設ける。寝室から見えるのは空だけ。そこに横たわると、まるで空を飛んでいるかのような気分になるというわけだ。

居間にある窓を開くとテラスへと続き、更に大きな空間へ。テラスからは、階段のようにデザインされた傾斜路があり、それを下ると川の水を感じることができるのだ。地形そのものが、家の裏側、入り口、そして川へといった3次元の動きを可能なものにしたのである。

『従来の殻を破ってくれるようなクライアントに巡り合えて、僕達は本当に幸運だと思っています。僕達と同じように、ここに住む友人もこの家での生活を楽しんでくれたら嬉しいです』とこの2人の若い建築家達は語る。クロスターノイブルクが陽気な季節になっただけではなく、ここにももう一人、違う意味でラッキーな人がいたとは…。

Bayer Hoppe Olbrich Neumayr
住所:3/8 Georg Cochplatz, A-1010 Wien
TEL:+43 (0)1 512 7142
office@hoppe.at
http://www.hoppe.at

Text: Christina Merl
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Klaus Olbrich

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