コッシュ・サロン

PLACE


「今夜何処で食べようか?」外食に行く時に、もしかしたらこれはあなたが直面する疑問の一つかもしれない。でも、近所のイタリア、アジア、トルコ料理屋にはちょっと飽きが来ている。安くて美味しい料理を食べさせてくれる店ならたくさんある。でも一方で、小洒落たちょっと高めの店もある。しかし、仲の良い友達が2、3人で集まるようなリラックスした雰囲気の中に、美味しそうなフードが並んでいる、といった2つの極端な状況が完璧に実現できるような店など、殆ど無いのが現状である。

テルセ・バスが「コッシュサロン(クッキング・サロン)」を仲間2人と始めたのは4年前である。この事業を始めるきっかけは、ハンブルグの美大で勉強できるような十分な資金が無かっただけではなく、調理に対してアートという形としての魅力を彼女が感じていたからだ。絵画や彫刻といった言わゆる「伝統美術」の製作に満足感を得られなかった彼女。そんな彼女が感銘を受けたのが、現代的な表現方法としての調理だった。

「例えば、あなたが物凄い量の料理をロケーションと言うある場所に持って行って、みんながおなかという家にそれらを持って行く。そして、そんな忘れられない夜を記憶として頭に残す。こういうことです。」と、私が訪れた水曜の夜に彼女は言った。このような強い信念は、彼女が魅了されているアートの一面である、と言えよう。「他のアートは常に現代過ぎていました。ビデオ、写真のスチール、音楽などのような他の素材をサンプルしているだけのような。そのような時に、アンティークなイメージがある料理で同じことができるのではないか、と思い始めたのです。現代的な料理と独特な雰囲気を同時に作り出してみたかったのです。」と、説明する彼女。そんな彼女が唯一避けようと努めたことは、いい料理を出せるだろうけどもそれはいつも、特定のパーソナリティの欠乏か溢れ過ぎの為のような計算尽くされた、商業的なイベントは行わない、ということである。

この事業への融資を得て、店の修復と新しい調理器具購入の為に彼女が閃いたアイデアは、土曜日のパーティー予約をすべてキャンセルし、コッシュサロンのスペースを貸し出し、50ドルで株を売るのだ。その見返りとして、バイヤーは一人60ドル分ずつ飲食ができる。全ての株はあっという間に売り切れ、その結果店を買い取るのに必要な7ヶ月間は、それほど多くの経済的な問題は発生しなかった。キッチンの周りにカウンターとイスを設置という風に修復したお陰で、まるで家でお母さんが料理をしているのを見ている気分になれる。

この日のメニュー:
クルトンがのったセロリのクリームスープ
豚ヒレ肉とりんごのバーガーとサラダ、チャツネ添え
ピーマンと西洋ねぎにのった、アンティーチョークとフェタチーズのラビオリのクリームのマンゴーのティンベイル
麺と豆のゴートチーズ巻き
白身魚のフライとサーモンのフィレ、蒸したきゅうりとじゃがいも添え
スパッゲッティ・アル・アラビアータ
クリームのかかったアップルクランブル

常連客になってまず不思議に思ったことは何かと言うと、彼女がどうやってユニークかつ多種に及ぶ素晴しいフードを作っているのか、ということである。背後にどんなコンセプトがあるのかは、私たちは知る由もないのだが、一つだけわかったこと。それは彼女曰く「いつもあらゆるフードを用意していること。ベジタリアン料理、肉、魚、サラダ、スープ。何でも。」だからだそうだ。週の始めにはミーティングを設けて、この1週間でどのような食材を使いたいかを決めるという。そして毎朝、テルセがその日は誰が調理のリーダーであるかをコックに告げるのである。同時に、買っておいた食材で何を作るのかが決められる。「ちょっと(ドイツのTV番組の)クッキング勝負に似ているのだけれども、フードについて意見を交わし、どのように調理するのがベストか、メニューがパーフェクトなものになるまで徹底的に話します」と、彼女は言う。

素晴しいフードを作り出す為の重要な役割の一部として、国籍の違うコックが一緒に調理をすることがある。「みんなでフライパンを回して、まるでDJのようです」と彼女が言うのは「DJがレコードをまわすように、その週に使う食材を使った最高のミックスを作り出したいから」だそうだ。テルセの料理哲学において、毎週同じ料理をメニューに載せないことは重要な鍵の一つである。同じフードがメニューに載らなくとも、週に一度だけ違う日がある。それは毎週月曜日の夜、お客さんが好きなフードを紙に書いて投票する「フード・ロッタリー(くじ)」が行われるのだ。紙が収集されると、みんなの賛成が得られる好きなフードが出るまでくじは引かれる。スペインの伝統に添って、フードが棒の上に載せられてサービスされる火曜日の「ピンチョスデー」、そして水曜日のドイツ料理が再現される「ホームクッキング」。木曜日は「エレクトロナイト」。セント・パウリのジョイントで地元のDJがレコードを回すのである。金曜日も音楽はフードと融合する。「パワーウーマン・デイ」でもあるのだが、男性のDJももちろん歓迎である。しかしながら、コッシュサロンでもっとも興味深い面白い日、といえば土曜日だろう。2大シェフが火花を散らす「クッキング・バトル」が行われるからだ。このユニークなコンセプトから生まれるいくつかのコンビネーションは、例えばピーナッツソースとベーコンが添えられたオーストリアの蒸し肉団子等。その他にも週毎にアートのオープニングも行われている。「美味しいラテンの日」はラテン・アメリカのフードがメインの日だ。

もうおわかりのように、このようにコッシュサロンではいろいろなイベントが行われている。私の意見として、グルメな料理とリラックス、ゆったりした雰囲気の間にあるギャップに近付く、というコンセプトは完璧に的を得たものだ。そしてここで食事をすることは、最高の楽しみなのである。

Kochsalon
住所:Bernhard-Nocht-Str 95, Hamburg, German
info@kochsalon.de
www.kochsalon.de

Text and Photos: Daniel Goddemeyer and Andrew Sinn
Translation: Sachiko Kurashina

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