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ホテル・フォックス

PLACEText: Ayako Yamamoto

ホテル・フォックスはレンガ色の多い街並の中で、真っ白な壁面に各部屋の窓についたカラフルなひさしで、浮き上がるように建っている。中に入ると、吹き抜けのガラスから差し込む陽に、明るく照らされた壁一面のパンダロサの作品が目に飛び込んできた。


Pandarosa

その大きさなのに圧迫感の無い、どこかを漂っているような作品だ。目を離したすきに、形が変わってしまいそうな浮遊感があり、ホテルのロビーという、到着地点でもあり出発地点でもある場所にしっくりとはまっていた。昨年の11月からヨーロッパツアーを行っているパンダロサ。旅する先で出会う食べ物、歴史、人々、気候や湧き出る感情から得るインスピレーションをホテルという場所に反映し、素敵な空間を作り出していた。

廊下にはアーティストがデザインしたカーペットが敷かれ、階段の踊り場の壁面も作品で埋められている。廊下に面したドアもその部屋をデザインしたアーティストが担当し、宿泊する部屋以外の作品も垣間見ることができる。まるで、ホテルという一つの大きな展示会場に61個もの小さな会場があるような感じで、ドアを眺めながら歩き回っているだけでも、うきうきとしてくる。


WK Interact

アーティストの中には3、4週間かけて、壁に直接ドローイングをしたり、ペイントしたりと、いろいろな思いが込められている。通常のホテルでは考えられないアイディアの宝庫でもある。部屋の中にいるのに、天気の良い日の庭にいるような気分になる部屋や、天井からキャラクターがゴムで吊るされた遊び心たっぷりのもの。白を基調としたクールな部屋など。


Speto

その中の一つ、デザイン集団リンゼンのリラが手掛けた部屋には、ベッドではなく、テントが置かれていた。壁には沢山の動物が住む森をイメージしたペイントがしてあり、宿泊者はキャンプに行った時のように、テントを閉め、中に吊るされたランプを消して眠るようになっている。『4週間、服から何までペンキだらけになって、気が狂いそうだった。』とリラは言う。


Steve and Rilla (Rinzen)

『でも、全てを終え、今はとてもハッピー。この部屋で自分が眠りたいぐらい。』テントのアイディアは後から湧いてきたものだと言う。『長い時間をかけて部屋を作り上げていく中で、同じ様に制作している他のアーティストたちとの交流を通して、お互いにインスピレーションを与えあえたと思っているの。』カーテンとベッドカバーは、彼女のお母さんの手縫いだそうだ。『お母さんは、私の手伝いをするのが好きなの。』と、いたずらっぽく笑うリラ。何とも温かい雰囲気で、優しい気持ちになる部屋だ。リンゼンのスティーブとリラは、このプロジェクト終了後、オーストラリアからベルリンに活動の拠点を変える予定だ。

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