ミュージアム・クォーター

PLACEText: Christina Merl

昨年の6月に、巨大なミュージアム・クォーター(MQ)がオープンしたことで、ウィーンの街全体が美的保守主義を振り払い、最先端の近現代アートに飛びついた。広大な文化複合施設として、世界でも10本の指に入るMQ。かつてのオーストリアの王族の最盛期に見られるクリーム色のバロック様式の厩舎に近代的な巨大な立方体を配置し、美術館やパフォーマンスの劇場として生まれ変わったのだ。


© Ali Schafler

4,200平方メートルの広さがあるこの施設。「Q21」の名で知られている「フィッシャー・フォン・エルラッハ・ウィング」と呼ばれる1階と、「オヴァル・ウィング」と呼ばれる2階部分は、正確に言うと多目的文化研究機関の役割をはたしており、現代アートの制作、交換、そして発表がその目的だ。2002年9月に、20にも及ぶ文化事業団、メディアスタジオ、オフィスユニット、イベントアリーナ、地元アーティストのためのライブインスタジオのドアが遂に開かれた。そのQ21により、アート分野専門の書店、小規模ながらも地元に根付いた文化設備、そしてバーなど、様々なサービスが可能となったのだ。

MQのディレクター、ウフルガング・ワルドナーと、Q21のコンセプトディベロッパー、ビタス・ウェーによると、このプロジェクトは、そのプロダクションや現代アートと文化の交換と発表に適した場所を提供する、というアイディアがベースとなっている、とのこと。それにより建築面のコンセプトも、その都市に住む様々な住人や、通りごとの様相、絶えまなく繰り返される変化などが含まれるルールに沿ったものになった。老朽化が進むパビリオンの構造は、建物の保存もかねて、建築的にトンネルのような特徴を強調することになったが、これは直接的にはバロック調建築様式には関係していない。

Q21の第一コンセプトでは、3つの核となる点がフォーカスされている。「エレクトロニック・アベニュー」、「トランスユーロッパ」と呼ばれるエリア、そして多目的イベントスペースがその3つである。「エレクトロニック・アベニュー」は、1階にある「フィッシャー・フォン・エルラッハ・ウィング」の半分にも及ぶ大きさがあり、そこではエレクトロニックミュージック、ビデオアート、ネット・アクテシビズム、そして未来学といった現代社会のエレクトロニックな面が反映されている。同じ階の残り半分の空間は、似たように構成されつつも、国際的な学会、文化事業団、アーティストグループ、国内の地方のプラットフォーム、そして地元アーティストプログラムといった様々なイベントにも対応できるようになっている。「トランスユーロッパ」は、着実にその規模を拡大しつつあるヨーロッパの同盟関係において、文化的中枢としてその役割をはたしている。ヨーロッパに存在するあらゆる文化、新しいトレンド、そして独創力に注目したものだ。多目的イベントスペースは、講議、上映、プレゼンテーションなどに最適なステージが用意された空間である。

アーティスト・イン・レジデンス・プログラムでは 「オヴァル・ウィング」の最上階にあるライブインプロジェクトスタジオの使用の機会を、海外からのアーティストや文化事業を担当しているマネージャーに提供している。ウィーン滞在中、彼らはそのスタジオで作品を制作し発表できるというわけだ。このように、Q21の文化施設には、海外からのアーティストと地元アーティスト達が触れあい、交流を深めていくという考えが根付いている。そしてこのプロジェクトの目的もまた、現代アートと文化を持続的、かつ境界線を越えながら交換し合うことであり、それによって社会全体に地元と海外のアートの活発的な融合を与えることができるのである。

つまり、Q21で見受けることができる文化と商業のミックスは、わずかながらも経済的にその運営を保っている事業家センターの文化事業推進者の多種に及ぶネットワーキングの可能性を保証しているのだ。デジタルメディア、音楽、写真、フィルム&ビデオ、演劇&パフォーマンス、文学、デザイン、建築、文化セオリー、そして一般的なクロスオーバー的な独創力といったフィールドにある団体や主導者達に対するこのような契約は、2年まで、という期限つきだ。しかしQ21は常に、迅速、かつフレキシブルに新しい文化のトレンドに順応することができる体制を整えているのだ。

Museums Quarter
時間:10:00〜22:00
住所:Museumsplatz 1/5, A – 1070 Wien
TEL:+43 1 523 5881
office@mqw.at
https://www.mqw.at

Text: Christina Merl
Translation: Sachiko Kurashina

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
カラードットインク
MoMA STORE