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フォータニアン・オープンスタジオ 2005

PLACEText: Samantha Culp

香港は多分、アーティストとして生きるには世界中でも最も難しい都市の一つだろう。ほとんどのアートギャラリーが、外国や中国本土のアーティストしか扱わないとか、香港の大物実業家達がこぞって買い集めるのが、明朝時代の骨董品に限られているとか、“アーティスト”としての地位が未だにきちんと確立していないなどの事実以外に、もっと根本的な“場所がない”事が、実は本当の問題だからだ。1メーター毎に値段があがっていく超過密地帯の市内では、当然家賃が沸騰している。その結果、若いアーティスト達の研究所、試験所と化すアートスタジオは、香港人達にとって、今の今まで手が届かないものだった。

元工業地帯にある工場が空になり、格安の家賃で借りられるようになった火炭(フォータン)地区に若いアーティスト達が集まり始めている。やっとの事で“自分のスタジオ”だと呼べる空間を手に入れることのできた画家、ミュージシャン、彫刻家達で、この消滅した製産用工場は埋まっている。ほとんどの住民が近くにある香港中国大学の美術部を最近卒業した若者達で、皆それぞれに卒業式直後に自分のスタジを持てる事に極度な違和感を感じている。幸運にも、数人の勇敢な先駆者達が他をひっぱるようにして、フォータン地区内のワリュン・インダストリアルセンタービル内に店を開いている。

今では、ユーチョン・センター、オンワー・インダストリアルビル、他多数の中にスタジオが次々と成長し、そこで作品を作っている多種多様のアーティスト達(とは言っても、彼らのスタジオは彼らの住処と一体化しているのだが)は、一つのグループとして「フォータニアン(火炭芸術村)」と業界では呼ばれるようになった。1年に二度、それぞれのスタジオを人々に開放したり、去年秋には火炭に拠点を持つアーティスト達のスタジオを収録した本を出版したりと、積極的に活動をしている。

火炭で作られる様々な作品に、ギャラリーで見られる典型的な今日の香港アートと劇的に異なる点はあまりない。—混合的画法、彫刻とニューメディアの融合、広範囲にわたる概念の追求よりも、表面上の質に焦点をおいた伝統的美術など—しかしながら、革新と刺激を少しながらも彼らから感じとることはできる。地区内に住むオットー・リー・ティンランは、小さな木製の立方体と、1980年代初期のピクセル化されたビデオゲームを連想させる、鮮やかな原色のサッカー選手や建物の型を使って、三次元の絵を創りだしている。

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