ロンドン族

THINGSText: Akemi Takagi

日本の雑誌がロンドンについての情報を収集する能力には、毎回驚かされる。最先端のエリアでの注目スポットをすでにカバーし尽くしていて、今は、ロンドンっ子でさえも気付いていないようなホットな場所を探しているようだ。東京にいる私の妹がいろいろ情報を教えてくれることもある。

私が最初に「ロンドン族」を手に取った時、日本のある雑誌がロンドンの情報をフィーチャーした特別号を発行したのかと思った。うまいデザインに上質でマットな紙、表紙には、日本人の若者がカボチャ(?)を持ち上げている美しい写真。店員にそれを無料で持って行ってもいいと言われた時は、すごくラッキーだと思って優越感を感じた。

「ロンドン族」は、ロンドンに住む日本人のためのフリーマガジンで、アートやファッション、本、映画、フード、音楽の最新情報をピックアップして紹介している。「ロンドン族」が発行される前は、ロンドンに住む日本人のために本当の意味で最新の情報を提供する、そのようなフリーマガジンは存在していなかった。

ローレンスとクリスティーナ兄妹とルークが「ロンドン族」をスタートしたのは、今から2年前。6ヶ月間の創刊準備期間の後、1998年9月に第1号が発行された。現在その雑誌は着実に成長している。

彼らが扱う最新の情報や個性的でユニークなレビュー、スタイリッシュなデザインは、ロンドンの日本人だけでなく、クリエイティブなロンドンっ子をも魅了している。以前は表紙に、ロンドンに住む一般日本人に、フルーツを手に持たせた写真を使っていた。前に一度、紙上で「ロンドン族」の表紙に載りたい人を募集したところ、ある日曜日のカムデンマーケットの一隅に多数の日本人が集まったらしい。みんな是非とも雑誌の表紙に載りたい人達ばかりだった。

彼らは、雑誌の仕事以外にも、ICAでのフィルム上映の後援などを通して現代日本の映画制作者を紹介している。今後もフィルム上映を続け、今がんばっているロンドンの若手日本人アーティスト達をサポートするために、イベントやクラブナイト、アート賞なども行っていくらしい。

ロンドンで生活している日本人は、ほぼ10万人。この数は、旅行者と学生を除いた数で、それも含めるとものすごい数になる。ここ数年の日本の不景気のために、ロンドンで働く日本人の割合は減少しているが、日本人全体の数は今もほぼ同数だ。クリエイティブな専門家や学生が増えたのだ。彼らは、ロンドンの生活にうまく馴染んでいて、西洋の個人主義を受け入れている。

いろいろな意味でそれは良いことだが、ロンドンの日本人が、彼らのすぐ隣にも日本人が住んでいるという事実に気付かないふりをすることがある。街でお互いに会っても、互いに声をかけることは全くない。ただ日本人だからという理由だけで友達になる必要は全然ないが、お互いを避けるのは、ちょっとおかしい。「ロンドン族」がロンドンの日本人をいい意味でひとつにしてくれればと思う。

ロンドン族
住所:P.O. Box 22527 London W8 7GS
TEL:+44 171 221 6611
londonzoku@csi.com(日本語)
londonzok@compuserve.com(英語)

Text: Akemi Takagi

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