飯田竜太展

HAPPENINGText: Yoshihiro Kanematsu

木目?波?さて、いったい何に見えるだろう。自然のフラクタルのような、文字の黒と紙の白でできあがった立体のテキスタイルは、フランス語と日本語、あるいはカラーページや段組によって、それぞれに表情を持つ。飯田くん曰く『何だかわからないけど惹きつけられる』対象としての本は、がむしゃらな彫刻という過程をへて、捉えどころのない不思議なモノに様変わっていた。

展覧会の冒頭にはこう記されていた。

『本そのものが持っている「内容や意味、中の文字」は、読むことができない。しかしそれらの断片破片は、言葉にならない「何か」を語っている。「本」「文字」を、「彫る/切る」という行為によって、別のものへと昇華する。「本」「文字」を彫刻するというのは、そんな「見えない何か」、「見ることはできない何か」を、垣間見せるための行為なのかもしれない。』

本を切り開く。本から文字を刳り貫く。そうしてでき上がった何とも言えないそれは、特に意味を付与されないまま、ただそこにあり続ける。知識の集積としての偉大なる本は、物質そのものの美をはらむことを、その豊かな表情は教えてくれた。彼のアートから放たれる力強く新しい衝撃、それはハッとするほどの文脈の転覆にあるのかもしれない。

飯田竜太展
会期:2006年6月13日(火)〜7月2日(日)
会場:(g)
住所:東京都渋谷区恵比寿西1-31-12 2F
TEL:03-5728-1711
https://www.gooddesigncompany.com

Text: Yoshihiro Kanematsu
Photos: Yoshihiro Kanematsu

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