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ブギス・ヴィレッジ

PLACEText: Fann ZJ

人間はノスタルジックな生き物だ。僕は時々、自宅からそれほど遠くない、ストリートを下ったところにあるかつてスナックを売っていた木造の小屋を思い出す。僕の母は、彼女の部屋の床板の下を通って逃げ出したチキン達を懐かしそうに思い出す。誰もが皆、過去の記憶の一部を忘れずに持っているものだ。自分が切望する何か、なくしてしまった何かを。

僕が今懐かしく思い出すものは、ナイトマーケットと遊園地の雰囲気。ゲームセンターやネットワークゲームができる以前は、カラングパーク・ワンダーランドと呼ばれる遊園地があった。記憶に残っているのは前方にライオンの頭がついたジェットコースターと、甘いソースの香ばしい揚げ麺を売っていたうす汚れた屋台があったということ。ジェットコースターから聞こえる人々の叫び声のエレクトリックな雰囲気と甘い綿菓子の誘惑は、僕のような小さな少年にとってはかなり圧倒的なものだった。

国際都市シンガポールでは新しい経済が巻き起こり、ライフスタイルも変化した。これらの記憶は実在しないようだ。彼等が言うことには、ナイトマーケットの賑わいは今やなくなり、道ばたで行商人が亀スープを味わっていたような人だかりは実現しないだろうとのことだ。それらは過去の遺物であるというのだ。本当だろうか?

確かに、街の行商人は衛生上の理由で行商人センターに移転した。ハウパーヴィラ(タイガーバームガーデンとしても有名)やタン・ダイナスティ・ヴィレッジなどのテーマパークは、商業的な場所だということが証明されている。ほとんど全ての物が揃う広大なショッピングモールがハイストリート(60年代の最もポピュラーなショッピング地帯)に取って変わった。間違いなく、過去の歴史を思うのには十分な証拠だ。過去は決して僕達に何も残さない。ただ僕達と共に成長していくのだ。

最近、ナイトマーケットと移動遊園地の活気が蘇った。それらは移動可能なもの(シンガポールの公共バスに取り付けられているテレビジョンサービス、モバイルTVのようなもの)となった。「君が来ないならこちらから行ってやろう」というモットーで、様々なものを行商する屋台を組み、2、3日のあいだ滞在するパサー・マラム(ナイトマーケット)が、シンガポール周辺の住宅地にも進出している。CD、フード、植物、フルーツやマットレスまでもが売られ、フードと音楽のコンビネーションがカーニバルのお祭りムードを醸し出し、子供達は綿菓子やポップコーンに夢中になっている。

この移動遊園地は期間限定だが、子供時代の記憶を思い出させてくれる。昔と変わらない素朴なゲームがそこにはあり、昔と同じく勝つのは難しい。テクノのビートとシンクロするバンパーカーのような昔ながらの乗り物もある。何日か経つと遊園地は片付けられ、いつも通りの生活が戻ってくる。僕達の子供時代の過去を振り返るちょっとした娯楽だ。

さて、これらは正確にはナイトマーケットではない。ブギス・ヴィレッジのおかげで、フルタイムの「ナイトマーケット」は日中でさえもその空気を刺激する。もともとシンガポールの女装マニア達のショウが開催される場所だったブギス・ヴィレッジは、長い年月をかけて様々な物が混ざり合ったものへと変貌を遂げた。現在はもうショウは開催されていないが、この場所に誰がショッピング天国としての可能性を見い出すのだろうか?ここでは安っぽいエレクトロニクスを見つけることができる(僕のヘッドホンもここで買った)。ファッションも盛んで、賃料が安いために実業家達がこの地区にファッションショップを次々とオープンさせている。ボディバッグからサングラスまで、予期しないものを見つけることができるだろう。オープンエアのシーフードレストランやフード街、ファーストフードショップ、数々のスナック屋台、フルーツ屋台など食べ物も豊富で、ダイエットのことなど忘れ、大いに食べるべし。アンティークや家具を扱う店やハローキティー専門の店などもあるので、バーゲンハンター達にとっては見逃せない場所だ。気分はノスタルジック。思い出が蘇る。

活気とスリル
フラッシュとスプラッシュ
笑顔としかめ面

様々な栄光

思い出は
僕が見るもの

押し寄せる波
あふれる感情
楽しむ全ての人達のために

過去は決して僕達に何も残さない。それは僕達の一部であり、僕達のなかにあるものだから。

Text: Fann ZJ
Translation: Mayumi Kaneko

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