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佐伯 仁

PEOPLEText: Mariko Takei

きっとハプニングを体験することでプロダクト、家具やインテリアの今のシーンを体感できると思うのですが、海外、日本を含めて最近のそのデザインシーンの中での新しい動きや流れなど佐伯さんご自身はどうみていますか?

世界でみるとインディペンデントのスタンスで活躍するデザイナーというのはちょっと前から多くでてきていて、日本だとほとんどいない。でも海外でそういう動きがあったという情報が入ってきたり、あと日本でも景気が悪くて就職もできないみたいなシーンもあって、すごく創り手側としては今、増えてきています。受け取り側のほうでも、最近ようやくそういう情報がでてきたんで少しずつ気付いてきてる人もいますが、でもまだ全然一般のレベルまで普及しているような状態ではないですから、まだ全然生活に関してリアルにないと思うんですよ。ヨーロッパの方だと自然に大人から若い者までデザインについて普通に語れちゃうという感じなんですが、日本はやっぱり家具の文化がまだ浅いというか。畳の文化ということもあると思いますが。

あと日本だと、雑貨の文化というのがすごく発達していて、雑貨屋さんというお店が沢山あって、ブームはそろそろ去ってきてる感じではあると思うんですけど、まぁそういうところで安いもの、中国製だとか、すごく安くて、でも偽物のっていう感じのものを普通に、それがちょっとお洒落みたいなかんじで変に普及してしまっていたんで、それもすごく弊害だったと思うんですよ。

新しいデザインがあってもそれを安く中国で作っちゃうっていう会社が日本には沢山あるんで、それを安くつくっちゃうと、それを買う層がいるという、すごく悪い、デザインの権利というものをまったく考えていない仕組みだったりするんで。

インフレートが流行ったときもニセモノ多かったですよね。

最近ようやくそういうものがかっこわるいということに少しずつ気付いてきている人がいて、最近ちゃんとしたデザイナーが作ったものを分かる人が分かるようになって来はじめた。で、つまらない雑貨屋さんが最近なくなってきてっていう動きもでてきている。

何か新しい素材や従来ある素材の新しい使われ方、発想などが最近の家具デザインのなかでの流れであると思うのですが。

ありますね。でもインディペンデントでやってきているデザイナーというのは、すごくハイテクな研究所をもっているとかいった人たちではないので、全く新しい素材を開発するということはものすごく難しいことなんですよ。それで、既存の素材をちょっと違う発想で、違うものに応用して使っていくっていう。そこで新しい機能性を見つけだしていくみたいなことが彼等にもできることなんで、そういったことは頻繁に行われていますね。

日本と海外のデザインを比較した時なにか相違点あるいは同じようなところとかありますか?

日本はまだまだ未熟というか、そういう環境がないという感じではありますね。でも日本にはいろいろな情報が入ってきているんで、今東京の人と例えばロンドンの人とパリの人がいたら、同じような生活しているんですよ。でも使っている家具とか結構違ったりとかして。

日本は家具を置くスペースがないというような、住環境もあるんですけど。すごくその「住」という空間を軽視しがちなのね、日本人は、今。昔はそういうところも日本の伝統的なところで重要視していたんだけど、今はその環境をあまり気にしない人が多いんです。目の前に見えるモノを集めてみたりとかすごく消費することにばかり目がいっちゃっている。モノを集めたりするってあまり中身がないかなって。集めてうれしいんだろうけど、それは自慢ができるからうれしいっていうレベルであって、普通に生活を楽しむっていうのとはちょっと違う。

ハプニングの招待参加の中でも、日本だと空間全般をデザインしている方のほうが多くて、海外のデザイナーの方が比較的プロダクト・家具をデザインしている人が多いですよね。やはり日本にはインディヴィジュアルに家具・プロダクトをつくる、商品化していく場がないんですか?

パワーがないんですよ。まだ力もないし。あとやっぱり消費文化に犯されていってしまっていて、そういう若手のデザイナーが空間をやるチャンスがあるっていうのは、海外はまずほとんどない。

日本だとブティックだったら毎年内装を変えて、その度に大量のゴミがでるってことがあるけど、あまりそういうことは海外では行われないから、(日本は)恵まれてはいると思うんですよ、仕事という意味では。でも決してそれがいいことかというと、せっかくデザインしたものでも、たぶん2、3年でなくなっちゃうものを作ってるわけじゃないですか。

あとさっきの海外と日本の違うところというので、環境問題とかもっと地球レベルでの快適さ、長い視野でみたそういうものへの意識というのは違うと思います。リサイクルとかも含めてね。

ヨーロッパに行ったときに各地で沢山リサイクルのゴミ箱をみました。普通に町なかにどかんと大きなリサイクル用ゴミ箱があるんですよね。

彼等はもう生活に根ざして自然にやっているんですよ。だからそういうエコロジー的な視点のコンセプトの作品というのが割と自然にできてると思うんです。日本はそういう生活してないから無理にそういうことをしようとしたって、取って付けたふうなものしかできない。生活の違いがあるかもしれない。だから消費者のほうも、家具なんかも安いもの買って飽きたら捨てちゃえばいいやってね。

デザインっていうのは根付く必要がある。小手先の面白さだけじゃすまされないというか。

今後の展開、予定などは?

なるようになるんじゃないかな。あまり長期計画をたてて物事を進めるタイプじゃないので、その時のテンションでいっちゃう方なんです。ハプニングは来年もやることになると思います。

今年のハプニングはオランダのインテリア誌「FRAME」を招待し、出展者の中からFRAMEアワードという賞が与えられるそうだ。デザイナー側と使う側の双方が私たちを取り巻く空間の、そして、その空間を創りだすプロダクトの新しいあり方を普段の生活の中で見いだし、再認識させてくれる場となるだろう。

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