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マーカス ベルンリ齊藤Markuz Wernli Saito

Photo: Sonja Wenger (project “Forbidden Art”)

Photo: Sonja Wenger (project “Forbidden Art”)

デザイナー、アーティスト、そしてキュレーターとして、マーカス・ベルンリ・斉藤は社会的・文化的要素の両方を含む参加型の芸術活動を試みている。彼が設立した「Momentarium(モーメンタリウム)」とは、アート以外の様ざまな分野In the role as designer, artist and curator, Markuz Wernli Saito is experimenting with event-based projects that contain both social and cultural components.と連携しつつ、京都だけでなくあらゆる場所-人びとがそこで生活し、それが素朴に表現されているような日常空間-において、彼らが相互に関わりあうこと、繫がりあうことを目指したプラットフォーム創造のための活動を行っている。その活動の目的は、芸術機関あるいは団体といった閉じられた空間に収められたものだけが「アート」であるという考えを批判し、普通の人びと(芸術家ではない人はもちろん、芸術に特別興味や関心を持たない人たちも含めて)が、自らの日常生活を生き生きと鮮やかに彩る「特別な-日常茶飯事」の存在に気づき、それらを積極的に見つけ出すことの楽しさ-すなわち「アート」を体験することにある。


自己紹介と最近の活動についてお願いします。

6年前、私は造園家・ 重森三玲の手掛けた日本庭園に関する本のなかで、写真を含めたビジュアル・デザイン部分を担当したのですが、その当時私は三玲特有のランドスケープ・デザインを十分表現できるような、これまでにない何か斬新なクローズアップ・アプローチを探していました。ところがだんだんと、自分の撮りたい写真にとって重要なのはただ被写体そのものなのではなく、それをとりまく人びと被写体とのつながりであることに気がつきました。その時以来私の作品のスタイルは、人びとがそのなかに入り込んで、それを体験し、そして最終的には彼らがその作品を一つのかたちへと完成させていくような「場」を創りだすことを目指すようになりました。私にとってアートの体験とは、完成された作品の中にあらかじめ用意されているのではなく、予期せぬつながりやそれまでは存在しなかったような関係性に私たちが出会うこと、その出会いのチャンスの中にあるのです。私たちの現代生活は直接的な体験といったものから遠ざかりがちで、特にアートやデザインの世界ではそれが顕著です。私はこれはとても残念なことだと思っています。だから私のアート作品は「どこでもお茶会」、「公衆電話記念日」「水路巡り」など人びとの活動をその基盤としています。私たちの生(なま)の体験のなか、「いま・ここ」という世界のなかで、そこに散りばめられているさまざまな驚きや偶然性に出会うこと、すなわち「アート」を経験することを目指しているのです。(セカンドライフと言われるバーチャルな世界とはまったく対照的な世界での経験、ということです)私たちが目にしているこの現実こそが、まさに私たちが実際に経験しているものそのものであり、それが時間性を持つことで「生きる」という経験が織りあげられてゆくのですから、「アート」も我われの経験を通して、この生きた織物のなかに織り込まれてゆくことができると思うのです。

最近の活動についてですが、今私は京都周辺の使われていない空間のもつ可能性に興味があります。これら多くの空き地は、古家が取り壊されてから大体10年程使われずにそのままになっているような土地です。日本ではギャラリースペースは限られているし、また高価でもあるので、私はこの空き地を利用して友人たちと「Curators Without Galleries(ギャラリーを持たないキュレーター)」という活動をはじめました。この活動は人びとと建物の間にあってまだ何ともつかない状態で(その潜在的可能性が)眠っている空間を現実に楽しく活用するにはどうしたらいいか、ということを考えてみる、というものです。そんなわけで、「資金や法律上の問題は抜きにして、あなたならこの空いたスペースをどんな風に使ってみたいですか?」という質問をさまざまな人たちに問いました。見知らぬ人たちとのこうした会話の中で、私は彼らにもう一つ、粘土で自分のアイディアを作って見せてくれるように頼みました。それで出来上がったのがこれらの小さな彫刻作品なんです!アーティストではない26人の人びとが、何かを創造しはじめること、つまりアーティストになってゆくことは私にとってとても楽しくエキサイティングな経験でした。それを表現する方法(シンプルで、明確で、楽しめるような)さえ知ってさえいれば、人びとは自分たちの生活に何が必要だと考えているのかをとても素直に教えてくれるものです。彼らの彫刻作品は最終的には京都市内で格好のロケーションにある空き地を確保し「INBETWEEN」と名付けた展示会において一つ一つ展示することができました。たった10日間という短い期間と少ない経費で活動の開始から終わりまでを完遂し、それまでほったらかしにされていたスペースをこのプロジェクトに関わった全ての人びとにとって忘れがたい場所へと変えたのです。


京都について、また京都での活動や生活について教えてください。

私は京都に6年年住んでいますが、いまだに発見していない人や物、場所にいつも驚かされています。単なる観光地としての表面的な京都をもう少し掘り下げてその奥を覗いてみると、京都という街は貴族や一部のお金持ちの財力によって作られた華美な街なのではなく、そこに脈々と行き続けている一般の人びとの手によって作り上げられているのだということを肌で感じられるでしょう。また私は、京都は現代文化と伝統、そして自然がたがいに美しく織り合わされているような素晴らしい場所だと思っています。

例えば 法然院のような寺院が社会的な交流の場として様ざまな人びとに開かれていますし、あるいは沢山の若く革新的な「京都人」たちが、昔ながらの職人技や農業を継続・発展させようと積極的に活動を行っています。特にこの若者を中心にした「都市農園」の活動は、市街地での小規模農業の復興という側面だけでなく、同時に本来の食文化(地産地消)へと我われのまなざしをむけさせるという側面ももっており、生産者・消費者の別なく「食」を介して全ての人びとにつながり意識を生み出すきっかけともなりうるものだと考えています。


京都での生活についてといえば、京都はそれぞれの人が、ご近所同士、あるいは仕事仲間、または社会的なグループのメンバー同士として常に誰かと何らかのつながりを持ちながら生活している複雑な社会だと言えると思います。私自身は外国人としてあるいはアーティストとして、ある意味において社会のアウトサイダー的な立ち場にいながら京都で生活するという事にはアドバンテージがあるように思います。どういうことかと言うと、「主流」と看做されるようないかなるグループにも属していないということは、逆にどんな先入観も無しに、完全に開かれた状態で一つの状況を見られるということでもあるからです。様ざまなしがらみからある程度自由でいられるため、私にとって京都に住むということは、遊びごころを持ちながら何にでも挑戦していけるような「クリエイティブ・ライセンス」を与えられているようなものだと言えます。例えば日本の伝統芸術である茶道を茶室から市街の賑やかな街角へと移動させ、伝統文化と現代生活をミックスすることもできるのです。このような普段は思いもよらないようなちょっとした変化を経験することが、もしかしたら誰かにとってその人生を変えるきっかけにもなるかもしれません。


この町のアート・デザインシーンについてどう思いますか?

京都は、職人からマンガのアニメーターまで素晴らしい才能と創造性のある人びとで溢れている場所です。それは伝統的な性格を持つアートスクールと現代風のデジタル中心のアートスクールが、結局は京都という一つ屋根の下で育てられていることにも理由があるのかもしれませんね。私にとっては、アート・クラフト・デザインというそれぞれの領域の境界が曖昧になるような時や作品こそが、本当に面白く興味深いと思う瞬間であり作品です。そこで京都のアート/デザイン・シーンを紹介するなら、まず市営の「京都アートセンター」が挙げられます。ここは定期的に様ざまな様式のインスタレーションやパフォーマンス・ワークを開催しています。また「アニュアル・ギャラリー」や「楽町楽家」も特筆すべきことでしょう。「楽町楽家」というイベントでは五感を通して伝統建築に親しむことができます。他にもまちづくりの一つの方法としてアートを取り入れている取組みとして「アトリエ劇研」の活動を挙げることができます。彼らの活動は、月に1回の有機野菜市とボディー・ワークショップを中心としています。

街中に数多くあるギャラリーやカフェの情報を全て頭に入れておくことは簡単ではありません。ですから今どんな事が行われているか、どんな面白そうなイベントがどこであるのか、などということを知りたいときには、私はクリエイターたちのネットワークを通じて教えてもらいます。定期的にいくのは「喫茶はなれ」で、ここは毎週月曜の夜、普通の民家のリビングルームを”Café Independence” のように地元のアーティストやデザイナーたちが集う場所に変身させています。そこでアーティストやデザイナーたちがドリンクやオーガニックの食事越しに社会や芸術や政治やその他、ありとあらゆるトピックをさまざまに話し合ったりするわけです。またそれ以外のクリエイターたちの交流点としては「恵文社」。-ここは本好きなら絶対行くべきです!-と「Green e books」の2つの本屋さんがあります。Green-e-booksは展覧会やイベントを企画・主催し、京都が作り出す芸術活動に一役かっています。また最後に(といってもこれで全て、というわけではありませんが)「THE MAP」のようなアーティストたちのコラボレーションを目的としたユニットもあります。彼らは西陣周辺にある数多くのアートスペースでダンス、パフォーマンス、フィルムなどの活動を行っています。


京都の好きな場所を教えてください。

京都ではいたるところに魅力が潜んでいます。例えば、千本通りと下立ち売り通りの交差点を、下立ち売り通りに沿って西に歩いてみて下さい。そこは上京区の一部なのですが、都市開発をまぬがれた昔ながらの風情をとどめた地域です。また街を取り囲む山のほうへと足を伸ばせば、観光客向けの地図には載っていないような、小さく苔むした神社仏閣など、京都本来のスピリットとでも言うべきような場所が見つかるでしょう。また、私は日常生活のなかにある「自由な創造力」が大好きなので、小さな裏通りや水路が好きですね。「自由な創造力」とは、人びとのちょっとした生活上の工夫やアイデアなどのことなのですが、こういうものが裏通りや水路には見つかることがあるのです。他に好きな場所といえば、街に流れる川や小川もそうです。これらは京都人たちの社会生活にとっても重要な場所だと言えると思います。例えばピクニックやちょっとしたコンサートには、鴨川が皆のお気に入りの場所の一つでしょう。そうそう、水の回りに人が集まる場所で好きな場所といえば、街のあちこちにある銭湯もそうです。私はとりわけ左京区の白川温泉のような昭和や大正時代の面影を残した古い銭湯が大好きです。
ちょっと一息ついて地元のアートやデザインシーンを楽しみたくなったら、この2カ所を訪ねます。建物の1階がバーで2階がライブハウスとギャラリーになっている「トランクルーム」と、鴨川の景色とおいしい食事を同時に楽しむことができる「エイフィッシュ」です。このカフェのインテリアは西堀 晋さんのデザインで、アート作品やクラフト作品がディスプレイされています。


マーカス・ベルンリ斉藤
1968年スイス、バーデン生まれ。「Kyoto Journal」や「KANSAI TIMEOUT」などに写真およびデザイン部門で貢献。「Kansai International Photographers Association」のメンバーでもある。彼と他2名のアーティストによるコラボレーション・チーム「Z+E+M Public Art Collective」は2009年スペイン、スコピアで開催されたアートフェスティバル「2009’ IDENSITAT」で特別賞を受賞。そのデザイン性も高い評価を受けている彼のネットワーキング・プロジェクト(「つながり」を志向したプロジェクト)、パフォーマンス、映像作品は、世界各地のアート・イベントやフィルム・フェスティバルで発表されており、作品の一部はスイス文化局による支援を受けている。


Translation: Haruka Kibata
He established Momentarium, an open, interdisciplinary laboratory that creates unusual platforms for sociability and networking within the lived and mediated spaces of Kyoto (and beyond). Through collaborative, public interventions outside of closed art institutions, ordinary Kyoto citizens are brought into an active, participating position in order to explore fresh interpretations of what is amidst everyday life.


Please tell us about yourself and your recent activity.

Six years ago I took photographs for a book on the Japanese gardens of Mirei Shigemori where I was looking for a radically new, close-up approach of representing landscape design. Soon I realized that the instant connection with the people around me was extremely crucial for taking outstanding photographs. From that point on I started to create artful situations where people can enter my work, make use of it, and complete it. For me the art experience isn’t located in the finished product but in opening up opportunities for unexpected connections and relationships that didn’t exist before. In our present lives we are often distanced from direct experience, which is in particular true for the design and art world. With action-based initiatives like Mobile Tea Ceremony, the Payphone Memorial, or the Guided Tour in the City Canal my projects engage people through surprise and happenstance in the “First Life”, in the here-and-now (as opposed to virtual worlds like Second Life). It is this immediate presence that leads to an experience we can possibly take back with us, and integrate into our own lives.
Recently I got interested in the creative potential of the many remnant spaces in Kyoto neighborhoods, these empty lots of real estate that remain unused often for decades after an old house has been demolished. Since gallery space is limited and expensive here, I established with friends the initiative Curators Without Galleries, that explores fun and practical ways for (re) activating these dormant spaces between people and houses. I simply asked strangers how they would use such an empty leftover space (regardless of money or legal constraints). During these conversations I encouraged participants to prototype their visions with play dough and suddenly all these little sculptures of art were born! It was exciting for me to elevate 26 ordinary people into the role of artists. Given the right approach (simple, clear, unthreatening), people will tell you honestly what is needed in their lives. We were also able to secure a remnant space on a top location in Kyoto for the final IN_BETWEEN exhibition that showcased the participant’s visionary sculptures. Within just 10 days and with a shoestring budget we put together a fine exhibition from scratch and turned idle space (between houses and humans) into something alive for everybody involved.


Please tell us about Kyoto and how about living in the city for yourself/activity.

I have lived in Kyoto for about six years and I am always amazed at the people, things, and places I have not yet discovered. If you go beneath the city’s touristy surface you get a sense that Kyoto was originally built by hands and not money. I think that Kyoto is at its best where the present culture, traditions, and nature are interacting with each other. It is great to see for example, that temples like Hounen-in increasingly become centers of social connections, or that a good number of young, innovative “Kyotorians” keep craftsmanship and urban farming alive. There is a resurgence in small-scale agriculture and local food culture in the city which brings people together on a primary level.
Kyoto is a complex society where people have distinct ties to their neighborhood, profession or social group. Myself as foreigner and artist I have the status of an outsider, which works to my advantage I think. Since I don’t belong to the in-group (the majority), I have the ability to look at the situation possibly in a more unbiased, open way. Living in Kyoto gives me the “creative license” to be playful and experimental. For example, I can take the liberty to transplant the traditional tea ceremony from the teahouse onto a bustling street corner in downtown Kyoto and mix up tradition with contemporary life. These surprising shifts of experience in things we take for granted, can be truly live-changing.


What do you think about the art/design scene in the city?

Kyoto is home of an incredible wealth of talented and creative people ranging from esteemed artisans all the way to hip manga animators. In many art schools traditional and digital arts are nurtured under the same roof. It gets really interesting when the borders between art, craft and design are blurred. The city-run Kyoto Art Center regularly puts up fine installation and performance work that intersect these different genres. Worth mentioning is also Anewal Gallery and its innovatory town festival Rakumachi Rakuya which encourages the public to interact with traditional architecture through all five senses. Another initiative that employs art for community building (or “machizukuri” in Japanese) can be found at the performance center Atelier Gekiken which opens its venue once a month for combined organic farmer’s market and body workshop.

It is not easy to keep track of the numerous galleries and art cafés dotted throughout the city. When I want to know what’s happening I prefer to tap into some of the networks among the creative people in town. Regularly I touch base with Kissa Hanare where a living room is turned into a kind of Cafe Independants on Monday nights – a social hub for local artists and designers to converse over an organic meal. Other important creative crossroads I find in the two independent bookstores Keibunsha – a must-go for art book lovers! – and Green-e-Books that actively contribute to the cultural fabric of Kyoto by hosting exhibitions and events. Last but not least, there are artist alliances like THE MAP which coordinate dance, performance and video activities in a number of independent art spaces around the Nishijin area.


Please tell us favourite places in Kyoto.

In Kyoto I find a lot of charm on the margins of the city. It is fascinating to walk on Shimodachiuri Street and head west from Senbon Street. It leads you into a part of Kamigyo Ward that hasn’t seen much urban development and retained a lot of its original neighborhood character. If you venture a bit into the mountains that encircle the town you can still find the pristine spirit Kyoto is known for like a small, mossy shrine that’s not on the tourist map. I also love the ‘undefined creativity’ of everyday life that is best discovered along small backstreets and city canals. The many rivers and streams are very important for the social life of the city. No wonder that Kamogawa river is the favorite open-air hangout for picnics and ad-hoc concerts. Another great place where people are gathering around water are the bathhouses found in every neighborhood. I particularly like the older, slightly run-down baths from the Showa or Taisho period like the Shirakawa Onsen in the Sakyo Ward. When I want to get a glimpse from the local art and design scene, two spots are on top of my list: Tranq Room that houses a bar on the ground level, and is a live music salon and gallery on the second floor. And efish that lets you enjoy the view of Kamogawa River over a delicious drink or meal. The café’s interior was designed by Shin Nishibori and there is a variety of art and craft items on display.


Markuz Wernli Saito
Born 1968 in Baden, Switzerland, Markuz is a photo and design contributor of Kyoto Journal and Kansai Timeout and a member of Kansai International Photographer’s Association. He is the co-founder of the Z+E+M Public Art Collective that received “special mention” (top five project entry) at the 2009′ IDENSITAT art festival in Sondika, Spain. Markuz’ “design-powered” networking projects, performances and video work has been featured worldwide at art venues and film festivals and were supported by the Swiss Arts Council.
http://momentarium.org

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