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レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才

HAPPENINGText: Alma Reyes

それらの技法は、「ウィーン分離派の結成」の章にある《装飾的な背景の前に置かれた様式化された花》(1908年)にみとめられる。この作品からは、クリムトの様式に影響された金色の陰影と銀系色の背景とのコントラストを強調しつつ、あでやかなオレンジ色の花に紫色のグラデーションを添えるという工夫がみとめられる。この創意が凝らされた手法によって、装飾性と平面性における不均衡を得ることに成功している。背景にはある種のパターンが浮かび上がって見えつつも、変化する筆の運びによって、打ち延ばされた金属のような効果を発揮しており、植物のシルエットは後の裸体の作品の輪郭を予見させる。


エゴン・シーレ《装飾的な背景の前に置かれた様式化された花》(1908年)油彩、金と銀の顔料/カンヴァス、レオポルド美術館蔵

「エゴン・シーレ アイデンティティーの探求」の章に進むと、我々は作家自身、恋人、妻などの人々の肖像画に取り囲まれる。《叙情詩人(自画像)》(1911年)は、シーレの最も有名な自画像の一つであり、緊張と複雑さに彩られた作品である。画家は頭を傾けながら、挑発的にも怯えているようにもみえる表情で何かを見つめている。痩せて骨ばった肢体を暗い衣服と背景が覆う。比率が矛盾した頭部、その下には左肩にへばりついている長くか細い首のようにみえる長尺状の矩形、大げさに細長い指に我々は目が離せなくなる。親指が手のひらの方に折られているのか、曲がっているのか、とにかくこちらからは見えなくなっており、これはいわばシーレ作品の銘である。蒼白の顔を補完するかのように下半身は明るく描かれており、赤、緑、黄色の絵の具がまるで血管のように塗られている。この独特の技法は他の肖像画にも見られる。


エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》(1912年)油彩、グワッシュ/板、レオポルド美術館蔵

また、彼の代表作一つとされる《ほおずきの実のある自画像》(1912年)は、白い背景に暗い衣服と髪が完全にコントラストをなしている。蔓が湾曲して葉が乾燥した赤いほおずきが全体を際立たせ、複雑に配置された肩、頭、目線のバランスが見事に制御されている。モスグリーンの瞳とその奥のワインレッドの光が劇的な効果を放っており、その視線には繊細かつ力強いオーラが宿る。

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