バーバラ・クルーガー「 ̶あ̶な̶た̶を想うこと。私は。私はあなた」

HAPPENINGText: Victor Moreno

今回のMoMAでの展示は、彼女のアートがどのように空間や視点と相互作用し、それ故に彼女のデザインと建築の間の意味を誘発するのかを探求する、またとない機会となったのである。巨大な文字、言葉、文章、段落の迷路の中を歩き回る来場者を、テキストの大きなスケールが取り囲む。最終的に、作家は皮肉とユーモアを交えながら、来場者とメッセージの間の相互作用を視覚化しているのである。例えば、「あなた」と「私」という代名詞が意図的に使われ、来館者に直接語りかけている。「これは“私”ではなく“あなた”についてです」、「“あなた”がどこにいるにせよ、“あなた”が誰であれ」、「“私”が“あなた”になるために」。また、「WAR TIME、WAR CRIME、GANG WAR、COLD WAR(戦時、戦争犯罪、暴力団抗争、冷戦)」、「YOU WANT IT、YOU BUY、YOU FORGET IT(あなたは欲しい、あなたは買う、あなたは忘れる)」など、皮肉を込めたパターンを視覚的に作り出す反復を好んで使用する。


Installation view of Barbara Kruger: Thinking of You. I Mean Me. I Mean You., on view at The Museum of Modern Art, New York from July 16, 2022 – January 2, 2023. Photo: Emile Askey

先に説明したように、クルーガーの作品には、詩と政治、デザインの間に多くのつながりが存在する。その好例が、美術館の最上階のアトリウムに来ると、一階のメインフロアにある「IF YOU WANT A PICTURE OF THE FUTURE, IMAGINE A BOOT STAMPING ON A HUMAN FACE – FOR EVER(未来像を描くなら、ブーツが人間の顔をずっと踏み続ける姿を想像してください)」の文字が一度に見え、何千人もの来場者がそのメッセージを踏みながら歩きまわっているのが見えるのである。このメッセージは、1949年に出版されたジョージ・オーウェルの「1984」という本から引用されたもので、人間の生活のあらゆる面が統制された全体主義的な世界を描いたディストピア小説である。クルーガーは、この恐ろしい未来が今ここにあることをユーモラスに示唆しているようだ。


Installation view of Barbara Kruger: Thinking of You. I Mean Me. I Mean You., on view at The Museum of Modern Art, New York from July 16, 2022 – January 2, 2023. Photo: Emile Askey

全体として、バーバラ・クルーガーは個人について声明を出しており、私たちは皆、何に関しても異なる視点や経験を持つことができる。詩、政治、広告を組み合わせた彼女の手法は、女性差別、権力の乱用、消費主義、アイデンティティの曖昧さといった現代の社会問題の重要性に加え、俗っぽいイメージと簡潔なメッセージを組み合わせたインターネット時代において、さらに強力なものとなっている。

Barbara Kruger “Thinking of You. I Mean Me. I Mean You”
会期:2022年7月16日(土)〜2023年1月2日(月)
開館時間:10:30〜17:30
会場:ニューヨーク現代美術館(MoMA)
住所:11 West 53 Street, New York

TEL:+1 (212) 708-9400
https://www.moma.org

Text: Victor Moreno
Translation: Moeko Noguchi
Photos: Courtesy of The Museum of Modern Art, New York (MoMA)

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