ミルチャ・カントル展「あなたの存在に対する形容詞」

HAPPENINGText: Noriko Ishimizu

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《あなたの存在に対する形容詞》(2018)Photo: © Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès

アルバニアで撮影された映像作品《The landscape is changing》(2003)の連作で、デモに見立てた団体がロケーションを変え行進する様子が映し出されている。今作は東京で撮影され、行進する人々は透明のプラカードを持つ。映像作品の展示は、暗幕を張った暗い個部屋で行なうのが常だが、カントルはガラスブロックの透明性にこだわり、日の光を完全にはシャットアウトしないグレーのフィルムを貼って展示している。

『社会主義国であるルーマニア出身のカントルにとって、デモとは建国記念日などに公共の場で政権への支持を表明するものだったのですが、パリに移ってから見たものは抗議を行う、全く逆のスローガンのデモだったそうです』

人々が持つスローガンの提示されない「透明な主張」については、カントルがトークイベントでこのように話していたことを教えてくれた。

『スローガンを声高に叫ばなくても、多くの人が同じものを持って行進していること自体、すでにメッセージ性がある。透明であるからこそ、相手が何を訴えようとしているのかをそれぞれが読み取ろうとするものだ。人について語る時に大切なのは「あなたが誰か」ということではなく、「どういう人か」ということで、形容詞こそが大事なのだと話していました』

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《あなたの存在に対する形容詞》(2018)Photo: © Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès

事前にカントルからリクエストがあったという16カ所のロケーションは、具体的な施設や地域を指定されたのではなく、「教育の場」「宗教に関係する場」「政治に関する場」といったキーワードで伝えられたという。そのテーマに合い、かつ撮影の許可が取れた場所で撮影を行い、作家自身もカメラを回していった。

『撮影中に行進する人達に対しても指示はなく、撮り終えたものを作家の感性で編集しています』

好奇心が強く現場では細やかに反応し、次々と疑問が湧き出ていたそうだ。『撮影中に日本では見ている人が「何をしているの?」と聞いてこないのが新鮮で驚いた』という話もあり、オープンな人柄も見てとれたとか。

『お寿司を作るのが好きで、「1日3食お寿司でもいい」と言っていました。ホームパーティーでは、自分で握ったお寿司を振る舞うこともあるそうです』と、親日家の面も見せている。

最後に、展示をどのように楽しんでほしいか聞いた。

『光の加減で印象が変化していく展示です。とくに《呼吸を分かつもの》は、朝と西日が入る時間帯と夜とでは、見え方が異なります。ガラスブロックがフラットではなく乱反射する素材なので、夜は銀座のネオンが滲み、作品に昼とは違った効果を与えています。3ヶ月の展示期間中に一度だけでなく、時期や時間帯を変えて違いを楽しんでいただきたいですね』

流動する空気の中に身を置き、透明な主張に対峙した心は何を映し出すのか。あなた自身で読み取り、答えを見つけ出してほしい。

ミルチャ・カントル展「あなたの存在に対する形容詞」
会期:2018年4月25日(水)〜7月22日(日)
開場時間:11:00〜20:00(日曜日19:00まで)(最終入場は閉場の30分前)
不定休(エルメス銀座店の営業時間に準ずる)
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム
住所:東京都中央区銀座5-4-1 銀座メゾンエルメス8階
TEL:03-3569-3300
入場無料
主催:エルメス財団
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
http://www.maisonhermes.jp/ginza/le-forum/

Text: Noriko Ishimizu

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