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チーヤン・チェン

PEOPLEText: Satsuki Miyanishi

人の感情と物質の関係にフォーカスした理由があれば教えて下さい。

いつも私は人と人との微妙な関係に焦点を当てています。このプロジェクトでは、個人と社会の間の疎外された変化を強調するために、人間と物体の関係を利用しました。私が否定的な感情や物に焦点を当てるのには、個人的な理由もあります。実は以前うつ病に苦しんで、自殺しようとしたこともありました。またロンドンにいたときには、本当に親しい友人を失うという経験もしました。これらは映画に似ています。このような出来事によって、私がこういう感情が実際にどんなものであるか知ることになりました。こういうとき、誰も私の痛みを容認することができないし、私は最も苦痛な部分を内に呑み込まなければなりませんでした。他人には話すことができなかったので、“人”ではなく“物”にそれを打ち明けたのです。


Humans can only confess to Something rather Somebody © Chih-Yang Chen

同様の経験を持つ人がどれくらいいるか知りたいので、まずインタビューを始めました。インタビューを通して、多くの同様のフィードバックを受けました。特に、良い家族と良い友達がいて、良い人生と言える「普通の人」は、何かひどいことに直面したときに、他人に自分の気持ちを伝えることをさらに困難にしてしまいます。“それほどひどいわけではない”人生を歩む人のことを理解しようとしたり、共感したりする人はいません。

これが私が物語に3人の“普通”の人物を登場させた理由です。彼らがどれほど絶望的で、もがき苦しんでいるかを示したかったのです。そして彼らが友人、家族、そして社会からどれほど離れてしまっているかを。彼らが感じ、経験するもの、これらは私たちの実生活で起こっています。これらの物体は、堪えがたい経験に直面した「普通の人」の行く末を暗示しています。

感情コミュニケーションの実験からこの作品がうまれたそうですが、あなたの作品は実験からうまれることが多いのでしょうか?

はい、私の作品のほとんどは実験から生まれました。私の作品には様々な層から成るものや、象徴的なものもあるので、観客からのフィードバックは私のコミュニケーションプロセスの調整にとても役立ちます。たとえば、感情的なコミュニケーションは私がこの二年間に行った実験の一つです。卒業展の際に得たフィードバックは、将来の作品をより良い物にしてくれるでしょう。また材料にも少し遊びを入れた作品がありますが、その中でも一番面白かったのは、腐った食べ物とカビを使った作品です。結果は本当にひどい物だったので私の作品集には入れていませんが…。

Humans can only confess to Something rather than Somebody
Humans can only confess to Something rather than Somebody © Chih-Yang Chen

作品を制作する際にもっとも大切にしていることは何ですか?また作品のインスピレーションはどこから来ますか?

使用する全ての要素が意味を持っているので、それぞれの要素に見え隠れする、象徴しているものや繋がりに注意深く注目する必要があります。それは私にとってとても重要なことであり、作品の質を評価する基準でもあります。個人的には、不必要な要素はコミュニケーションを曖昧にするので、誇張した作品や装飾があまり好きではありません。私のインスピレーションは、常に個人が社会とどのように関わりを持つかという視点から来ていて、社会のマクロトピックから始め、個々人に絞り込んでいきます。社会の変化は個人にどのような影響を与えるのか、人々が社会における地位についてどのように考えるか、投機的な方法を使うことによって、私は世界について様々な視点を提供したいと考えています。

あなたにとってのビジュアルコミュニケーションの魅力、またその可能性について教えて下さい。

RCAのビジュアルコミュニケーションは、非常に概念的なトレーニングを提供し、様々なメディアに適用できます。以前より多くの技術とメディアがあるので、単にこれらの技術を駆使するよりも、これらの技術における地位を見つけることが重要です。私の家庭教師が昔、私に言ったことを今でも覚えています。『アートとデザインを分けてはいけません。あなたが考える必要があるのは、何を伝えたいのか、あなたの作品を見た後に観客に何を求めるのか。最も重要なのは、選んだトピックに対してあなたの立場はどこにあり、何が貢献できるのか。』これらの質問がデザイン、芸術、コミュニケーション、さらには自分の人生に対する私の見方を大きく変えさせてくれたと思っています。平凡で場当たり的なものを作り、ただそれから利益を得るのではなく、私が選んだトピックに責任を負う、これはビジュアルコミュニケーションから学んだ最も重要なことです。

予定されているプロジェクトはありますか?今後挑戦していきたいことがあれば教えて下さい。

何人かのクラスの友人と上海でニューメディアを使った商業的なインスタレーションを行う予定です。その後ロンドンへ戻り、私の個人的なプロジェクトを進めます。次の作品は、体はメディア、使用されるツールは記号、行動は儀式、意図は宗教になるというような、人間が自分の体をどう扱うかについての新しいシリーズを作りたいと考えています。このプロジェクトの他にも、社会の象徴的な意味に興味があるので、将来の作品はこのテーマをより発展させていきたいと思っています。長期的な目標のため、ホログラフィック投影と速いスピードで形成されるオブジェクトを組み合わせた臨場感のある作品に取り組み、見る人を自分のコンテンツに導くより良い方法を提供していきたいと考えています。

Text: Satsuki Miyanishi
Photos: Courtesy of the artist, © Chih-Yang Chen

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