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アートフェア札幌 2016

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

北海道内のギャラリーによる出展も本フェアにとっては大きな意味がある。札幌市民にとって最も身近な存在であり、道内の優れた作家を知ってもらえれば、実際にギャラリーへ足を運んでもらう機会につながるからだ。また、北海道には札幌以外にも独自の文化を持つ地方都市がある。ここからは、北海道から出展したギャラリーを紹介する。

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1310号室 Art Labo 北舟(帯広)

関東から北海道豊頃町に移住したアーティスト白濱雅也がオーガナイズする北のアート実験船「アートラボ北舟」(帯広)では、「凝縮額絵」と題した、長谷川桑知子ら複数のアーティストによる手のひらに収まるほどの小さな額縁の絵画が並べられていた。バスルームには照明を取り入れた山本佳子の繊細なガラス作品が幻想的に光っていた。帯広市在住の写真家、戸張良彦が捉えた「無限大の原風景」は、いかにも北海道らしい風景ではないにも関わらず雄大であり、白黒の濃淡でその深淵あるいは普遍性を写し出しているようだった。

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1308号室 ギャラリー三日月(函館)

100年以上前の土蔵を利用した空間を拠点としている「ギャラリー三日月」(函館)。滝花保和は、経年で錆びた機械の断片を思わせる重厚な半立体作品や、対照的に鮮やかな層を透明に重ねた抽象画、動物や建築物のラフなイラストレーションなど、それぞれ小作品でありながらも、旺盛な創作意欲と可能性を感じられた。昨年に続いて出品された石川潤の奥行きと純粋さを併せもつ抽象画、墨田信城によるシニカルで独創的な大人向け絵本「幽霊船長と赤い人魚」原画の他、coniによる鉄や木の彫刻作品、水の一瞬を表現した折笠恵子のキャンドル作品も展示されていた。

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1311号室 ギャラリー門馬(札幌)

近年、積極的に国内外のアートフェアへ参加し、札幌・北海道のアーティストを紹介している「ギャラリー門馬」(札幌)。経塚真代の「あの子の悲しみ」をコンセプトとした人形の造形作品が初日で完売するなど、ディレクター大井恵子の手腕にも注目が集まっている。自ら撮影した現実の素材のみで非現実世界のデジタルコラージュを制作するクスミエリカ、フレスコ画に用いられる石膏刷りの技法をシルクスクリーンと併用した石井誠、本田征爾による透明水彩や淡いブルーを基調とした架空生物のオブジェ、井越有紀のストッキングを素材としたソフトな質感の人形作品など、全体的に物語めいた世界と現実の境界を行き来するようなテーマ性を感じさせる空間となっていた。

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