「Work in progress of Origins」2016年 © Han Seok Hyun

ソックヒョンは今年３月からクンスラーハウス・ベタニエンによるレジデンスプログラムに参加するためベルリンに滞在している。新生活をここで始めるにあたって彼が気づいたのは、あまりにも美しく並べられたスーパーマーケットの野菜や果物の数々。彼が幼少期を過ごした頃の韓国にはスーパーマーケットなどほとんど無く、農作物は不揃いであることが当たり前だったからだ。

「Work in progress of Origins」2016年 © Han Seok Hyun

今やスーパーマーケットに並ぶ農作物やその元となる種は大企業によって牛耳られ、まっすぐ、丸く、美しい形に育つように “改良”されている。この“改良”された農作物を通して私たち人間の日常生活に潜む矛盾にアプローチすべく、ソックヒョンはベルリンのスーパーマーケットで購入した野菜や果物をセメントで一体成型したあと、種をとり自らの手で伝統的な方法を用いて育てそれらを作品にするという方法をとった。

Photo: © Han Seok Hyun

その意図はスーパーマーケットから購入した“第1世代”の農作物、つまり自然の摂理を無視し“改良”された形揃った農作物と、ソックヒョンの手によって伝統的な方法で育てられた“第2世代”の農作物の形は異なるはずで（不揃いになるはずだというソックヒョンの仮説から）、その比較によって自然と人間の関係性において「一体何が ORIGIN（起源）なのか」を問うこと、そして私たちの日常生活に潜む矛盾をハッと気づかせることにある。

Photo: © Ana Maçã

ソックヒョンはこの作品を作るにあたって幾度と無く失敗を繰り返し、この展示を完成させたと言う。そのトライアンドエラーによる製作過程はまるでベルリンという新境地に移り住んだ彼自身の慣れない生活を表しているようだ。その一方で頑として自然と人間の矛盾に切り込むコンセプチュアルな彼の作品は国境を越えて多くの人々に響いているようであった。

Han Seok Hyun Exhibition「Origins」
会期：2016年10月21日（金）〜11月3日 （木）
キュレーター: Julie Walsh
会場：ASIA CONTEMPORARY ART PLATFORM NON BERLIN
住所：Chausseestr 11, 10115 Berlin, Germany
info@nonberlin.com
https://www.nonberlin.com