齊藤智仁

PEOPLEText: Ayumi Yakura

「123」を描く時には何を考えていますか?2ヶ月かけて100万字以上の「123」が細かく描き込まれた作品は、間近で見ると「制作にどれほど苦労されたのだろう…」と圧倒されてしまいます。でも離れて見ると、まるで苦しみが感じられないばかりか、大自然の地層年輪を見ているかのような穏やかな気持ちになります。もっと離れて見ると、スタイリッシュなグラフィックのようにも見えますし、描き方の変化によって立体のようにも見えたりと、全て「123」なのにバラエティ豊かで面白いです。即興で描かれているということですが…

小噺みたいなものに、ムカデが考えて歩いたらこんがらがって歩けなくなるみたいなのがありました。あと、動物の動きってとても無駄がなくて美しいと思っています。描くときは僕は何も考えていません。むしろ考えないように動画をみたり音楽を聴きながら考えないように考えないように努力をしています。それでも無数に頭の中で言葉やイメージが浮かんできます。そうしたものはしょうがないので、そのままにしています。考えているというか、自分がしゃべっているのを聞きながら、イメージを見ながら描いています。

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「123 Log」齊藤智仁, 2015, 1,300 x 1,620 mm, キャンバスに墨

踊りで、ずっと即興的なことをしていたので、そこで培ってきたものを使いたいと思い即興で描いています。下書きもありません。はじまりがあって、突如おわりがきます。それはある人にとってはスタイリッシュに見えることもあるし、情けなく見えることもあるし、クールにも、地層や年輪、足拭きマットにも、一夜干しにもただの数字にもなるとは思います。

「努力」ってフィルターはとても面白いと思っています。努力の精神的なものではなく、努力している人をみると心を打たれる時と滑稽な時があります。その振り幅にとても興味があります。また身体に負荷のかかるものに興味があります。

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YUMENOKUNI公演「ニワハコ」, MORIHICO Plantation GRENIER, 札幌, 2013, Photo: Yixtape

舞台作品には限られた公演時間がありますが、美術作品は何度も描き直すことができると思います。齊藤さんの作品には「失敗作がない」というのは本当ですか?

本当です。失敗しないです。

ご自身の性格を「飽きっぽい」と仰っていましたが、作品からは人並み外れた根気を感じていたので意外です。日記のように毎日「123」を描いてインスタグラムへ投稿されていますが、飽きたりしないのでしょうか?

正直言うと飽きています。しかし、このラインに立たねば出てこないニュアンスもあるということを今は理解してやっています。基本的には飽きっぽく、もっともな理由をつけて多くのことを辞めてきました。中学生の時は赤いエレキギターを買ってすぐに辞めてしまいました。

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齊藤智仁「123」展《第2章》123を描き続ける男, クラークギャラリー+SHIFT, 札幌, 2016 © 齊藤智仁, Photo: Jpeg Takeshi Oda

クラークギャラリー+SHIFTで4月末まで開催されている個展のタイトルは、『齊藤智仁「123」展《第2章》123を描き続ける男』ですが、ギャラリーの中央に置かれたヒモのような作品には「123」が描かれていませんよね?

はい。最近の作品です。今までは平面的に「123」を扱っていたのですが「123」を立体的にするにはどうしたらいいのか考えて出てきたものです。3手で紐を縛っていきます。その連続です。ただただ縛っていきます。123のリズムを立体的な形で、尚且つ可視化させられたのは今考えてもとても素晴しい結果が出たなと思います。簡単にいうと身体から平面に、そして平面を立体にということです。すごく簡単な説明ですが、この説明を超えることは難しいです。

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齊藤智仁 123展《第1章》, MORIHICO Plantation GRENIER, 札幌, 2015 © 齊藤智仁, Photo: Jpeg Takeshi Oda

昨年の12月3日から123点の作品を展示されたという「123」展《第1章》と、今回の《第2章》はどう違うのでしょうか?

第1章は「123」をどう見せるかというよりも「123」を使ってどう自分の中の表現したい、創りたい、という欲求を表に表せるかを意識していました。結果として、とてもエネルギッシュなものになったと思っています。第1章の個展によって僕と「123」は外の世界において繋がっていることを提示できました。

第2章は「123」とは何かを改めて考えていただけるような個展ができればと考えていました。「123」の作品には色々なシリーズがあります。それを整理していくことで、今後系統立てて「123」を考えることができるのではないかと考えています。答えではなく謎を共有していただきたいなと考えていました。


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