ニュー・オーダー ツアー 2015-2016

HAPPENINGText: Victor Moreno

感傷的損失で語られる35年のキャリア(まさしく、ハシエンダは赤字だった)は多くの山や谷に見舞われたが、バンドはそのたびに力を取り戻してきた。それゆえか、渾身のニューアルバムは自信にみなぎっているし、その音は新鮮だ。少し折衷的とも言えるだろう。そして、これはニュー・オーダーのアルバムの中でも間違いなく21世紀最強の作品である。「ミュージック・コンプリート」では、かつてのジョイ・ディヴィジョンのドラマー、スティーヴン・モリスがプログラミングを担当し、ケミカル・ブラザーズのトム・ローランズ、グラミー賞受賞者スチュアート・プライスが制作に携わった曲もいくつか収録されている。

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ほとんどのアルバム収録曲はおよそ6分。そして、ステージ上でもバンドは電子音楽的なパッセージを好んでいるようである。観客も同じだ。彼らのパフォーマンスに多少の「レイブっぽさ」が加わった理由はそこにある。実際、2016年に予定されているソナーロスキレなどの音楽フェスにも、ニュー・オーダーの出演が決定している。

スタジオでの制作や収録と同様、ステージ上で演奏する彼らの姿を目のあたりにすると、まっすぐな答えが見える。彼らはいつもハッピーで、自分たちの音楽を心から楽しんでいるのが分かる。そして、その音は力強い。そういった姿勢から、バンドを率いる彼が60歳を迎えようとしているとは、とても思えない。黒色のシャツは全開で、そこからのぞくTシャツには、「アンノウン・プレジャーズ」のジャケットがシルバーで印刷されている。彼はいまでも、ジャンプし、唇を噛み、右腕を振り上げる。観客に楽しそうに話しかけ、曲の合間にはワイングラスから小さな一口をすするのだ。

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彼らのようなバンドがツアーを始めると、郷愁を感じずにはいられない。さらに、その郷愁は敬意へと変わる。バンドと観客の記憶において、イアン・カーティスの存在は絶対だからだ。だから、アンコールにはジョイ・ディヴィジョンのカバー2曲が演奏された。弔いの歌として馴染みのある「アトマスフィア」と、無論お気づきだろう、「ラブ・ウィル・ティア・アス・アパート」である。演奏中ずっと、カーティスの写真が背後のスクリーンに映し出されていた。「ジョイ・ディヴィジョンよ永遠に」というメッセージも一緒にだ。この演出はまさしく、彼にふさわしい。最後の曲は「ブルー・マンデー」。100万以上の曲を凌いで、最大の売上記録を誇る12インチ・シングルがその夜を締めくくった。

NEW ORDER TOUR 2015-2016 in Stockholm
日程:2015年11月8日(日)
会場:Annexet Stockholm
住所:121 77, Arenatorget 1, 121 77 Johanneshov, Stockholm
http://www.neworder.com

Text: Victor Moreno
Translation: Ayana Ishiyama
Photos: Victor Moreno

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