山戸結希

PEOPLEText: Eri Yamauchi

監督の作品の主人公は少女が多いですが、今後も少女を撮り続けるのですか?

少女は要請がある限り撮り続けると思いますが、少女しか撮りたくないという感じでもなく、男の人を主人公に撮りたいなあとも思います。例えば少女漫画の世界では、ずっと少女漫画を描き続ける人もいれば、そこでの仕事を終えて年齢層が上のレディースコミックに移る人もいますし、男性誌に移る人もいますよね。行く先がどちらになるかは分からないのですが、初期はしっかりと「少女」を濃く描き切りたいなと思います。そのうち、レディコミや男性誌の気分になるかもしれません。

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「映画バンもん!~あなたの瞬きはパヒパヒの彼方へ~」 © 2012 WARNER MUSIC JAPAN

監督にとって映画とは?

今、目の前にあるものが映画、という感じです。小さいころは漫画家や出版業に憧れたり、大学生では哲学者を目指したりしてきましたが、結果としては、今別の世界にいますね。でも映画は一過性という感じがしなくて、映画がだめだったら他のことをしよう、他のアウトプットにしようという感覚になったことはないです。今ここ、目の前にあるものが最後の壁という感じがしています。

それは、映画という形式が自分に一番合っているということですか?

映画とは何たるかという内実が、自分の中ではっきりしていれば、「合っている」という言葉が使えるのですが… ただ唯一言えることは、映画は映画という形式を壊すことが許されているメディアだと思います。例えばホームビデオに好きなものを撮っただけでも、それを「映画」と指差してくれる人がいる限り「映画」だと思います。スクリーンがあってお客さんがいて初めて、そしてその限りは、何があっても映画で、何をやってもいいと思うのです。その状況が成立しなくなった時は映画をやめてしまうと思うのですが、世界の中では何を映してもいいと思っているので、何でもやってしまえば、全ては映画だと考えれば、これから映画以外のメディアに行くことはまだ想像ができないですね。

今後扱いたいテーマや目標などがあれば教えてください。

個別的なモチーフを何にするとしても、哲学的な問題、文学的な問題は取り入れていきたいですね。美しいだけの映画にはしたくなくて。哲学・文学の問題は自分が生きていく中で絶えずに接続していくものだから、どう生きるべきかという問題に接続するもの―例えば、地球の裏側に住んでいるブラジル人の男性が主人公でも、ちゃんと現在の人生に接続するものを撮っていきたいですね。

今後の目標についてですが、今、私の映画を観てくれているお客さんは、すごくアンテナの高い方たちだと思います。カルチャーに興味がある若い方や上の世代のシネフィルの方などに一番多く観ていただいているのですが、地方に行くと、映画を観るにはシネコンかレンタルビデオ屋で借りるかだと思うのですが、そういった場所で上映される映画を作りたいです。やっぱり「少年少女」達に観てもらいたくて、それも田舎まで。自分を振り返ってみると、少女期に観たものがその後の人生に大きく影響していて、私もそういった時期の感性に対して問題提起していけるようになりたいですね。そこに触れるようになるまで、そこに行くまで、映画を撮り続けたいです。

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「5つ数えれば君の夢」 © 2014 『5つ数えれば君の夢』製作委員会

最後に、新作「5つ数えれば君の夢夢」について質問をさせてください。今回は東京女子流という人気アイドルグループの5人を主人公にしての物語となりましたが、なぜ彼女たちを主人公にしたのでしょうか?また、作品の見どころなどを教えてください。

今回の映画の企画を担当されている、ストーリー・ライター針谷さんとスポッテッド・プロダクションズ直井さんが、彼女達を主演に映画を作りませんか、というお話を下さいました。見所は、東京女子流の5人、だれが主役とは言えないくらい、みんなが素晴らしい魅力を発揮してくれているところだと思います。ぜひ、5人の素敵な姿を発見して頂けるのが楽しみです。でも本当には、観て下さった方が良いなと思って下さったシーンがその全てだと思っています。心の中で何が起きているのか、あなた自身に突き止めて頂けたら嬉しいです。

5つ数えれば君の夢
日本、1時間25分、ドルビー、ワイドスクリーン
監督・脚本:山戸結希
出演:東京女子流(山邊未夢、新井ひとみ、庄司芽生、小西彩乃、中江友梨)他
公開日:2014年3月8日 シネマライズほか全国順次公開
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
製作:「5つ数えれば君の夢」製作委員会
https://5yume.jp

Text: Eri Yamauchi

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