アイスヒルズ ホテル IN 当別 2014

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

札幌を拠点に、広告デザインや装画なども手がける画家・蒲原みどりによる「ホワイトガーデン – 白の間」は、純白の雪を素材として、自然風景を描いた絵画が、ベッドを囲む三面の壁に彫刻されている。正面の壁には花がひらき、側面に生える草の中には野鳥と野うさぎが佇む。訪れた人々は、異空間で解き放たれた絵画の世界へ入り込むという、幻想的な体験をすることができる。

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蒲原みどり「ホワイトガーデン – 白の間」

原画の自然風景は、極めてシンプルに描かれた上品な静寂の中に、揺るぎない野生の意識を感じさせるものだった。ときに轟々と地吹雪が鳴る地で、厳寒の氷雪に守られた白い静寂の一部となって、秘められた野生の囁きに耳を澄ませてみてほしい。

現在、蒲原みどりは、クロスホテル札幌で開催中の「クリエイティブ北海道展」には、金箔を用いた絵画作品「Garden #12」を出展している。

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澁谷俊彦「アイスパレット – 光の間」

札幌を拠点に、北海道の自然と共鳴するインスタレーションを展開する美術家・澁谷俊彦による「アイスパレット – 光の間」は、様々な色彩に染まった氷のブロックが雪の壁に埋め込まれている。ただし、着色した水を凍らせたのではなく、カラーライトを照らしているのでもない。壁に埋め込まれたシートの蛍光色が自然反射して、無色透明の氷が色彩に染まっているように見えるのだ。

その独自の手法は、北国の自然そのものの性質と可能性を尊重し、負荷をかけることなく美しさを際立たせながら、天候や時間帯など、訪れるタイミングによって作品を変化させる。ときに暖かく、ときに甘いその印象は、思いがけず贈り物をもらった時の喜びに似ている。自然へ贈られたささやかな色彩は、自然から返ってくる贈り物となって、人々の目を優しさで染めてくれる。

澁谷俊彦は他に、北海道小樽市の小樽運河プラザと小樽貴賓館(旧青山別邸)では、雪上インスタレーション「スノーパレット5」を雪解けまで開催中。「クリエイティブ北海道展」には、白い自然素材を使用したオブジェ「ホワイトコレクション」を出展している。

「アイスステップ – 段の間」の空間デザインを共作したのは、北海道苫小牧市を拠点にアートイベント「樽前 arty +」(タルマエアーティ プラス)を主催し、積極的に地域や社会と関わる金属工芸家・彫刻家の藤沢レオと、苫小牧市出身で東京を拠点に活動する一級建築士の岡崎宗康。

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藤沢レオ+岡崎宗康「アイスステップ – 段の間」

ドアを開けると、入り口には厚い氷の壁が立ちはだかり、内部の様子がよく見えない。入っていくと、壁の裏には、強い北風に運ばれて流氷が接岸したかのように、氷の段が立体的・造形的に重なっている。外壁へ突き出す氷の柱から取り込まれた外光は、氷の冷涼な質感や透明感を美しく引き出している。

室内にして、広大なバルト海やオホーツク海をイメージさせる空間だ。滞在者は、不在の大海を漂流するかのように流氷から流氷へ渡り、辿り着いた冷たい氷のベッドで、暖かい寝袋に包まりながらアザラシのように夢の世界を漂うことができる。流氷が減りゆく地球環境に思いを馳せる人もいるかもしれない。

現在、藤沢レオは「クリエイティブ北海道展」に、鉄の彫刻作品「種 – 素描 -」を出展している。

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