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アキ・カウリスマキ「白い花びら」× ハンツヴィル

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

カウリスマキ監督は、古典的な撮影法を用い「20世紀最後のサイレント映画」と評される本作で、普遍的に繰り返される人間性の愚かさを描き出しつつも、教訓を与えるというよりは、言語の違いを超えて伝わるエレガントなユーモアによって、稀有になりつつある関係性の豊かさを謳っているのかもしれない。

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完成された映画に、あえて即興演奏を合わせることについて、ハンツヴィルは事前インタビューで『私たちの音楽の雰囲気や演出方法は、映画の演出と必ずしもリンクしているわけではありませんが、そこに面白さを見出すことができます。』と語っていた。

実際にほとんど、場面が転換するタイミングで演奏が転換するようなことはなく、監督の「静止した人物をカメラの動きで見せる」「カメラを止めて人物の動きを見せる」あるいは「どちらも止めて見せる」といった演出の客観性がもたらすユーモアを壊すことがなかった。

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元よりカウリスマキ作品を好んでいたメンバーは、ヨーロッパの映画祭に出演した際「映画のダークなユーモアが、自分たちの音楽と良いコントラストをつくるのでは」との想定から同作を選び、即興演奏をしていた経緯があり、ストーリーを生かす方向性をメンバー間で共有していたようだ。

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彼らは、事前インタビューでバンドの音楽性について『ソリストらの合奏からなる従来の組織的な音楽よりむしろ、一つの大きな生き物を作ろうとしているため、エゴから来る集団的プロセスを置くことを重視している』旨を述べていた。旧知のメンバーが互いを意識し合うとしても、即興で演奏する場合、個別のエゴによって3つの音楽を奏でることになるのだろう。3人による異なる律動、旋律、和声、音色が重なり合い、水滴が波紋をつくりながら満ちていくように、一つの立体的な音楽を作り出していた。遥か遠くの音が宇宙的に広がって包み込んでくれると思うと、耳の内側で鳴るような近い音が響き、他にない、気持ちのよい感覚を体験することができた。

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