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アートフェア札幌 2013

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

いつか札幌を「アートの街」として世界に誇れる日は来るだろうか。街中にどれほど美しいアートが集まっても、それらを迎え入れ、理解し、心から楽しむ市民の笑顔がなければ、真に美しい街とはいえないだろう。

前置きが長くなったが、20軒のギャラリーの展示内容について触れていこう。文字数に限りがあるため一部の作品のみの紹介になるが、実際に訪れていない読者にも、ホテル型アートフェアの雰囲気と、アート鑑賞の喜びを感じ取っていただきたい。なお、全室の記録写真が「アート札幌」のフェイスブックページで公開されている。

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写真提供:クロスホテル札幌

ホテル正面のエントランスには、北海道のアーティスト・砂金隆則による、赤い木の棒をドーム型に組んだ、大きな造形作品が3つ設置されていた。その横には、同じく赤色のフォルクスワーゲンの「ザ・ビートル」が特別展示され、華やかさを演出し、フェアへの期待感を高めた。なお、フォルクスワーゲン札幌東ショールームでは、アートフェア札幌出品作家であり、北海道に生まれ、ドイツ・スイスを拠点に活動を展開するアーティスト・小林俊哉の作品が、来年1月13日まで展示されている。

ホテル館内へ入り、2階で受付を済ませれば、エレベーターが国内外のギャラリーへ連れて行ってくれる。13階には、アジアセレクションのギャラリーが3軒隣り合っていた。

1303号室 オフィス339(上海) 写真:小牧寿里
1303号室 オフィス339(上海)

オフィス339(上海)は、上海へ日本のアートを紹介するため、北海道出身の鳥本健太によって設立され、現在はアジア各地にネットワークを広げている。壁には、上海を拠点とする日本出身の韓国人アーティスト、ナン・ヒョジュンによる、政治家や権力者の肖像をモザイク状にしたモノトーンの油彩画のシリーズが並んでいた。ちなみにオフィス339は、本誌SHIFTの中国語版編集部にもなっているので読者はご存知の方も多いかもしれない。

1304号室 リーソウル・ギャラリー(ソウル) 写真:小牧寿里
1304号室 リーソウル・ギャラリー(ソウル)

リーソウル・ギャラリー(ソウル)の、カン・ケジョンが描いた竹林や雪景色などは、季節の自然風景を繊細な感性で捉えた作品だ。こちらの出展者は、この2日間の為だけに印刷したパンフレットを配布していた。二つ折りの紙に、作品のカラー写真と、アーティストからのメッセージが日本語訳で記載されたものだ。それにより彼らは、札幌へ韓国のアートを伝えられると信じているのだろう。信じ合うことで新たな交流を育むことができるかもしれない。

1305号室 ステイトオブアーツ・ギャラリー(香港) 写真:小牧寿里
1305号室 ステイトオブアーツ・ギャラリー(香港)

ステイトオブアーツ・ギャラリー(香港)の、高畑早苗による「意識のポートレート」という絵画は、日本の海に中国の花が浮かんでいるかのような幻想的な世界を表現していた。現物は無かったがドレスへの展開も美しい。出展者とは、筆者の語学力の問題により、簡単な英単語での会話になったが、アートを介することによって、出展者が作品のどこを見て欲しいか、筆者がいかに感動したかなど、互いの意思が通じ合う実感を得た。文化が異なる者同士を繋ぐのも、また文化なのだ。

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スティーブ・ベイカー
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