アートフェア札幌 2013

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

アートマーケットといえば、オークション(競売)を思い浮かべる人もいるかもしれない。今年のニュースでは、フランシス・ベーコンの絵画「ルシアン・フロイドの三習作」が約141億円で落札され、競売史上最高額として話題となった。なぜ、それほどの高値になったのだろうか。一般の人は「現代アートの価値基準はよく分からない」と思っただろう。「自分には関わりようもない特別なものだ」と。外からの情報を受けているだけでは、アートが話題の種になっても、リテラシーの芽が育たず、マーケットが開花しないのだ。そこで、地方のアート関係者は、市民に向け街でアートの魅力を発信して、身近なものだと感じさせなくてはならない。

そこでまず、札幌で初となるアートフェアを開催し、一歩を踏み出したのには大きな意義があるだろう。市民に実際に見て体験してもらわなければ、その魅力について理解を得るのは難しいからだ。理解なくして協力を得られることは滅多にない。

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[アートフェア札幌2013 特別企画] ゲストトーク「アートフェアの楽しみ方」

24日の午後には、ホテル2階のミートラウンジにて「アートフェアの楽しみ方」と題したゲストトークも開催された。ゲストスピーカーは、アートフェア札幌2013のアドバイザーを務めた、hpgrp GALLERY TOKYOのディレクター・戸塚憲太郎。約1時間にわたり、国内外のアートフェアの紹介や、作品購入のヒントなどをレクチャーした。参加者はメモを取りながら熱心に話を聞く人達も多く、今後のアートフェアの楽しみ方について、より多くの理解を得ることができただろう。

既に国内では、東京以外の地方でも国際的なアートフェアが開催されている。後発であるならば、札幌ならではの独自性を打ち出していくべきだ。道外や海外の人が札幌の特色に魅力を感じたときこそ、市民は自都市を誇りに思い、自ら街を盛り上げようという機運が熟する。今後、アートフェアを継続的に開催し、発展させていく為には欠かすことのできない要素だ。

[アートフェア札幌2013 特別企画] 「モエレで朝食を」モエレ沼公園内「ガラスのピラミッド」 写真:小牧寿里
[アートフェア札幌2013 特別企画] 「モエレで朝食を」モエレ沼公園内「ガラスのピラミッド」

そのような独自性を打ち出す取組みとして、フェア初日(23日)の朝は、札幌へ集まった国内外の関係者達に、北海道の自然・アート・食を楽しんでもらう趣向で、イサム・ノグチが「公園をひとつの彫刻」として構想した、モエレ沼公園の「ガラスのピラミッド」内に「モエレで朝食を」と題した朝食会がセッティングされた。この日限定の特別料理を用意したのは、北海道を代表するフレンチシェフ・中道博がプロデュースする、同建物内のレストラン「ランファン・キ・レーヴ」。一般市民が参加できるものではなかったが、既存の施設やサービスも、その価値や組合せを見直せば、アイディア次第で驚くような活用方が見つかり、参加者を喜ばせながら「アートの街」としてのイメージアップが図れるという、札幌の未来へのモデルケースが生まれた。

[アートフェア札幌2013 特別企画] 「モエレで朝食を」モエレ沼公園内「ガラスのピラミッド」 写真:小牧寿里
[アートフェア札幌2013 特別企画] 「モエレで朝食を」モエレ沼公園内「ガラスのピラミッド」

来年は札幌で初となる「札幌国際芸術祭2014」が開催される。アートフェア札幌はその連携事業として開催された。他にも、芸術祭の成功に向けて、多くの市民がアートに興味を持てるようにと、既に「アート札幌」というプラットフォームも用意し、この時期に開催される様々なジャンルのアートイベントの情報発信も行われた。その全てを目撃することは難しいだろう。情報リテラシーを駆使して、見るべきものを自ら選び、鑑賞による感動を蓄積しながらアートリテラシーを磨いておきたい。

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