ICA(現代美術協会)特別展「1980年代から現在まで:ロンドン サブカルチャーを旅する」

HAPPENINGText: Fuyumi Saito

詩人であり絵描きでもあったデビッド・ロリアードのケースには、懐かしい色とりどりの星型ビーズがキラキラと散りばめられ、ケースの側面には「Life isn’t good Its’ excellent」(人生は良くない。でも素晴らしい。)など彼が書いたシンプルな詩と、哀愁漂う線で描かれる人物のイラストが貼られている。前衛的なパフォーマンスで、自らを「生きる彫」(リビング・スカルプチャー)と称する、2人組のアーティスト:ギルバート&ジョージと深い親交があり、彼らによる詩集の出版により、イギリス内でもその名を知られることとなったデビッドは、80年代のクリエイティブな精神を発信してきたアンダーグラウンドの出版物や雑誌に詩や絵を多数掲載しており、ギルバート&ジョージは彼を「現代人の新しいマスター」だと呼んでいた。1988年にAIDSのため36歳でこの世を去る1年前の詩「MEMORY OF A FRIEND(A burst of tears From all your friends the end: 全ての友人からの溢れ出る涙 終結)」が、きらびやかなビーズと相まり彼の生きた時代を髣髴とさせる。 

Mark-Blower-130907-Selfridges-Hotel-ICA-0045.jpg
ICA Off-Site: The Old Selfridges Hotel, Julie Verhoeven Vitrine, curated by Julie Verhoeven Photo: © Mark Blower

ルイ・ヴィトンのバッグデザインやファッションブランド「GIBO」のデザインでも注目を集めてきた、アーティストでありデザイナーのジュリー・ヴァーホーヴェンによるケースでは、彼女ならではのファッションスナップのコラージュやパステルカラーのイラストと共に彼女自身の横顔の写真が飾られる。しかしながら、ケース自体はガーゼのような布で覆われ、その全容をはっきりと見ることは難しい演出で、ポップカルチャーや虚栄に満ちた現代社会、性問題などのテーマに常に向き合ってきた彼女のメッセージを感じることができる。

Mark-Blower-130911-Selfridges-Hotel-ICA-0111-Edit.jpg
ICA Off-Site: The Old Selfridges Hotel, 2013, Installation Shots, Photo: © Mark Blower

このほかにも、1991年に立ち上がったコンテンポラリー・アート&カルチャーのマガジン「フリーズ」、女装ファッションの世界をナイトクラブに実現したヴォーグ・ファブリック(2008年にロンドンのイースト・エンドにオープンしたクラブ)、常に前衛的な活動を繰り広げてきたチャイセンヘール・ギャラリー、1996年から2003年までの間イギリスのベスト デザイナーとされてきたアレキサンダー・マックイーン、クラブDJやアニメーション分野でも活躍する異色の家具デザイナー、トム・ディクソンなどなど、イギリスから出発し世界的な人気を得カルチャーが一堂に空間に集まり、訪れた人はその歴史と現代のアート&カルチャーに彼らが及ぼしてきた影響力に感動を覚えることだろう。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
スネハ・ディビアス
MoMA STORE