ユージニア・リム

PEOPLEText: Joanna Kaweckia

実践のどんなところにパフォーマンスアートや自らの考えを伝えたり、感情を湧き起こしてあなたをわくわくさせる部分があるのでしょうか?

ずっとビデオや映画、生のパフォーマンスに魅力を感じていたのですが、それはどれもがあっという間に終わってしまうからです。一つとして同じパフォーマンスはありません。たとえ作品が延々と何日も何週間も続く場合や、私の憧れの人の一人である謝德慶の「イヤーズ」というパフォーマンスは今という時に起こっていて、全く同じものが繰り返されることは決してありません。アーティスト、そして観客の一人としてエネルギーのやりとりの中に入れるのが本当に楽しくもあり、また身震いも感じます。バンドやミュージシャンのライブを見ているときにも似た感情を抱くことがあります。こういう環境だと魔法のような時間が過ごせるのです!

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© Eugenia Lim

オーストラリア人のアーティストとして、「パフォーマンスアート」を実際に初めて体験したのは、美術学校でビデオに記録された初期の作品を通して経験することが度々でした。そしてビデオで作品を作る者として、パフォーマンスとビデオは密接に繋がった関係にあるものなのです。女性のアーティストとしては、パフォーマンスや一瞬の演技で女性が固定観念を崩して自分たちの存在やアイデンティティーを新たに構成して拡大させることができるというところに、大きな力強さがあると思います。鳥肌が立つようなアートこそ私が体験したいものであり、私の作品を観た人にも同じ感情を抱いてもらえるよう努力しています。

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© Eugenia Lim

特に何かから影響を受けたり、刺激を得ている人はいますか?

ここで述べるには多すぎるほどいるので、少しだけ挙げることにしますね!

アニエス・ヴァルダの作品は本当に大好きで、特に「落穂拾い」というドキュメンタリーでありフィルムエッセイでもある作品が好きです。ユーモアや親密さ、詩を作品に注ぎ込むところからすごく刺激を受けています。自分の老化過程を映像に記録する勇敢な女性でもあり、しわが寄った手や白髪混じりの髪、時の経過が映し出され、さらにそれを観客に興味を持たせ、意義深いものにしているところもすごいと思います。

ソフィ・カルも私にとってのヒーローですね(このフランス人たちには何かあるのでしょうね)アートと人生を融合させる上での彼女の無鉄砲さと勇敢な態度は非常に刺激的です。

亡くなったクリス・マルケルもそうなのですが、彼の「サン・ソレイユ」と「ラ・ジュテ」という作品には、いつもわくわくさせられるし心が動かされます。私の自宅の近くで活躍しているアーティストなのですが、アトランタ・イークとジャスティン・ショルダーは本当に面白いですよ。去年、それぞれのパフォーマンスを見たのですが、すごく驚かさられました。

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© Eugenia Lim

今年は、ビデオ・アートの祭典である「チャンネルズ」が初めて開催されますが、このイベントから何を創り出したいと考えていますか?(例えば、映像という媒体への理解を深めるなど)

チャンネルズはアーティスト主導の祭典であり、映像作品の実践をその様々に変化した形で紹介することを目的としています。この祭典をはじめようとしたきっかけは、21世紀においてビデオ作品が作られ、理解される過程を伝えたい、ということでした。映像というのは最も普遍的で消耗されている媒体の一つですが(例えばYoutubeからFacetimeといったものまで)、一方では必ずしも何かの目的に基づいたわけでも簡単に収集できるようなものでもないにも関わらず、今ではビエンナーレや “国際的なアート” の世界では人気のある媒体となっています。

映像というのはまだ比較的新しい媒体ではありますが、キュレーターであり美術史家でもあるダニエル・パルマーが著しているように、それは新しい世代が進んだ技術や文化が転換していくなかで再発見し、新たに選択していく “歴史を持たない” ものなのです。作る側そして見る側として、上映や講演、パフォーマンスやインスタレーションで現代の映像作品の広がりや奥深さをそれとなく伝えたいのです。地元のアーティストを世界中の観客たちへと繋ぐ国際的な祭典を通して、優れた様々な分野のオーストラリアの制作者たちに光を当てたいと考えています。

私は様々な人と共同で作品を作ったり、キュレーション、他のアーティストの手助けや教育を10年ほど続けてきて、大きな満足感を感じ続けています。このような活動で、私自身も仲間になりたいと思える芸術家のコミュニティーが作られているのです。チャンネルズはこのようなコミュニティーに参加することの延長なだけであり、これまで他の人と一緒に何かを始めてきた中で一番はっきりと形に見えるものなので、とても楽しみにしています。この祭典はアーティストや作り手、思想家、広い分野の人々が色々な作品を探索し、刺激を受け、そして楽しむためのものなのです。

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