プリマベーラ・サウンド 2013

HAPPENINGText: Julio Cesar Palacio

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レイバン・ステージから最後の日は始まった。80年代に活躍したネオクラシカル・ダーク・ウェーブバンド、デッド・カン・ダンスのパフォーマンスがあるのだ。13歳の頃に彼らがとても好きで、軽やかな、神秘的なライブだったことを覚えている。ラストの日の21時に求められているサウンドではないのかもしれないが、彼らのサウンドはとにかく非の打ち所がなく美しい。しかし、屋内ステージでのパフォーマンスの方が向いていただろう、とは思った。

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そして、このフェスティバルで最も待ちわびていた瞬間がやってきた。クラッシック・オールド・スクール、唯一無二のNYの伝説、ウータン・クランだ。レザ率いるクルー、ジザやゴーストフェイス・キラがクラシカルな選曲で会場を最高潮の盛り上がりへと導く。そして、もちろんODBへの敬意も払った個性的で力強いステージだった。

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ライアーズを観にピッチフォーク・ステージへと移動。ニュー・アルバム「WIXIW」からの以前に増したダンサブルで親しみやすいサウンドには驚かされ、とてもハッピーな時間を過ごせた。

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ハイネケン・ステージでニック・ケイヴを観ようと集まっている人のごった返しを避け、ATPステージへお目当てのスティーヴン・ステイプルトン(ナース・ウィス・ウーンド)へと急ぐ。フェスの中でも一際アヴァンギャルドかつ実験的なショーだったのだが、残念な事に多くの機材トラブルに見舞われたり、そこで地元のミュージシャンをステージに上げギターを演奏してもらったり・・となかなか手こずった様子だった。心残りではあるが、エクスペリメンタル・ミュージックとは、まさにこういうことなのだ。予期せぬことが起きる音楽を追求してゆくことなのだろう。

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ナース・ウィス・ウーンドの後に、フェスティバルの最後のハイライトが訪れた。シリアのミュージシャン、オマール・スレイマンの音に酔いしれて朝の3時まで踊り狂い、そのキャッチーなサウンドに身を任せた。ダブケの先駆者であり、レバノンやパレスチナ、ヨルダンの結婚式で流れるような、ノリのいい個性的なサウンド。無駄のない、アラビアスタイルのシンセサイザのメロディーとキーボードで僕らの体を動かす本物のMCだ。スレイマンのキャリアは長く、彼のディスコグラフィーを見ると500以上の作品を世に送り出しているが、そのエキゾチックな音が人々に愛され、たとえ歌詞の意味はわからなくとも、自然と踊り続ける事ができるのは、彼が常に新鮮さを失わずに音楽を続けているからだろう。本当に素晴らしいステージだった。

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過去5年間の中でも、最高の内容だったプリマベーラ2013が終わってしまった。カルト・バンドと共に、新しい様々な原石のようなバンドが混在し、ローカル・バンドやワールド・ミュージックも堪能できる素晴らしいフェスだった。天気予報の外れには心から感謝!全体を通して寒さが厳しい日が続いたが、体を熱くさせるホットな音楽に溢れたプリマベーラだった。

Primavera Sound 2013
会期:2013年5月22日(水)〜26日(日)
会場:Parc del Fòrum, Poble Espanyol, Barcelona
https://www.primaverasound.com

Text: Julio Cesar Palacio
Translation: Junko Araki
Photos: Julio Cesar Palacio

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