NIKE 公式オンラインストア

新生クンスト・ヴェルケ現代美術館(KW)企画展「再始動」

HAPPENINGText: Kiyohide Hayashi

他にも民族学の資料など植民地支配の歴史の傷跡を取り上げている。これら作品に登場する傷跡は、様々な暴力を思い起こさせ、見るものを圧倒する。しかし展示室では割れた鏡を繋ぎ合わせたものが並び、傷があろうとも再び元のように使用できることを指し示す。またかつての植民地支配国と被植民地国が、歴史の傷が抱えつつも新たな関係を生み出す意味で「修復」の意味を感じさせる。つまりここで重要なのは、引き離されたものを繋ぎ何かを生み出す「修復」の考えなのだ。

kw_attia_foto%20uwe%20walter_012_67777_72dpi.jpg
Kader Attia, REPAIR. 5 ACTS, Installation view, Act 3: Science, REPAIR ANALYSIS (Reparatur-Analyse), Reparierte Spiegel, Lithografien, Holzmaske / Repaired mirrors, lithographs, wooden mask, Dimensions variable, Courtesy of the artist, Galerie Nagel Draxler, Galleria Continua, Galerie Krinzinger, Photo: Uwe Walter

「REPAIR. 5 ACTS」の展示で見せた「修復」ついて、カデール・アティアはインタビューでその意味について語っている。彼が取り組む「修復」とは連続したプロセスで一種の「再構築」であり、次へと向かうステップなのだと。この「再構築」としての「修復」はKWの新しい方向性と共鳴を起こしている。ここでの領域横断は、かつてアートから切り離されたものを再び繋げる「修復」であり、それによってアートそのものの再考を促す「再構築」となる。もちろんそれは領域横断に留まることはない。

空虚な展示によるKWという美術組織への疑い。つまり「美術館とは一体何を見せる場所なのか」。キュレーターのアバターによるキュレーターという役割への疑い。つまり「キュレーターは、展覧会など美術の世界において一体どのような役割を果たすのか」。こうした新生KWでの「修復」と「再構築」は美術館、キュレーター、アートそのものの徹底的な刷新を図る挑戦となっている。この混乱を含んだKWの再始動はベルリンのアートを新しい高みへと導いてくれるのは間違いないだろう。

RELAUNCH
会期:2013年4月28日(日)~8月25日(日)
会場:KW Institute for Contemporary Art
住所:Auguststraße 69 D-10117 Berlin
入場料:6 Euro
https://www.kw-berlin.de

Text: Kiyohide Hayashi

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE