新生クンスト・ヴェルケ現代美術館(KW)企画展「再始動」

HAPPENINGText: Kiyohide Hayashi

もぬけの殻となった建物内を歩くと何度も背の高い一人の女性に出会う。彼女は館内を歩き回り、展示ホール中心に立ち止まり、まるでパフォーマンスのように身動きせず鑑賞者と向き合う。この女性は、Ellen Bluumensteinと呼ばれ、一文字「u」が多いだけで新しいキュレーター(Ellen Blumenstein)とほぼ同じ名前を持つ。ザビーネ・ラインフェルトとウルフ・アミンデがキュレーターのアバター(インターネット上の仮想の人物)として作り出した作品だ。

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RELAUNCH, INSISTERE # 7, DON´T FUCK WITH MY NAME (HACKING THE CURATOR), Series of Performances, © INSISTERE_Sabine Reinfeld/Ulf Aminde

ウェブ上だけでなく現実の展示会場でも活動を行ったため、彼女こそがキュレーター本人であると勘違いするものまで現れて物議を醸し出した。パフォーマンスであるが意味不明な行動を行うキュレーターの姿は、その役割や現在の美術界での影響力の大きさに疑問を投じるもの。多くの誤解と共に新しいキュレーター就任を強く印象付けたのは間違いない。

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KW Institute for Contemporary Art, Berlin, View from the street, Photo: Uwe Walter, 2010

このような「RELAUNCH」のスタートを盛り上げた展示作品と共に、KWは多くの変化を打ち出している。ウェブや印刷媒体のデザインの刷新、そして企画や展示の再構成だ。中でも新たなプログラムのために、建物を改装してイベントスペースを生み出したことは最も大きな特徴だろう。かつてのように建物全体ではなく1階2階のみが美術作品の展示のために利用される。その一方で3階4階は建築、音楽、演劇、文学のためのイベントに使用されるという。こうした改装により展覧会と平行して常にイベントの開催が可能となった。そして常時のイベント開催により多くの参加者を巻き込む美術館の姿は誰の目にも明らかとなっている。

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