ヨシ・ホリカワ
PEOPLEText: Hiromi Nomoto
タイガー・トランスレートに出演した感想、舞台上から感じた観客の反応などをお聞かせ下さい。
以前ニュージーランドの友だちから、ニュージーランド人は日本人と似てシャイな人が多いと聞いていました。実際ライブを始めて、なるほどと思いました。お客さんは沢山入ってくれていましたが、舞台から2、3メートル離れたところに立っていて、しばらくは近寄ってもらえず、しかも棒立ちに近い感じでした。不思議とこの状況に親しみを感じて嬉しくなりました。数曲目にはだいぶほぐれてきて踊ってくれる人が増えて来ました。
普段海外でライブをする際には、日本とこうも違うかという程、人目を気にせず踊りまくっている人が多く、反応がすごくいいです。そういう経験からも、よりニュージーランド人と日本人の共通性が見えたように思いました。
タイガー・トランスレート当日のライブの様子 Photo: Tiger Translate
ニュージーランドで、録音、音楽制作、コラボレーションをしました。そして、多くの人々との出会いがありましたね。
ニュージーランドで、そこの映像作家と、現地で録音した多くの自然音、原住民であるマオリ族末裔の人の言葉、伝統的な楽器とその演奏など、沢山のニュージーランド文化に囲まれて制作することができました。僕の制作スタイルを良く知っている関係者がいたこともあって、恵まれた環境を用意してもらえました。
カウリの森でマオリの伝統楽器奏者のリキ・ベネットの演奏を録音した。この時に録音した音は「Aoteaora」によく登場する。Photo: Tiger Translate
あなたがニュージーランドに来たことで生まれたものはありましたか?
タイガー・トランスレートで、ニュージーランドに呼ばれた日本人として何ができるか、何を期待されているかを考えました。必ず成果を残さなければという責任感も常に感じていました。ニュージーランドの文化を紹介する為ならば、ニュージーランドを良く知った現地の人たちだけでつくった方がいいに決まっています。しかし、あえて外からの目と耳を入れることでしか生まれない何かがあるのも事実です。ここで期待されるものはそういった文化や感性の交わりなのだと思うようになってからは、比較的伸び伸びと感じたままに制作を進めることができました。ライブの感想を伝えてくれた観客がいました。「ニュージーランド人の自分が日本から来た人にニュージーランドについて教えられたようだった。」という言葉を聞くことができて、この滞在がより意義のあるものになりました。
今後どのように発展していきたいかをお聞かせ下さい。
世に出るにあたって、自分が何者かというのを人に分かり易く示す必要があると思います。今は音楽、その中でも人がどのように聞けばいいか分かり易い音楽、例えばクラブシーンでちゃんと聞けるようなものにしておくとか、踊れる要素を入れようとかを考えてやっています。抽象的な表現も好きですし、メロディーが無いと成り立たない音楽とは違うものも展開したいです。まさに聞いただけで風景が目に浮かぶようなものなど。サウンドデザイナーを始めて4、5年経ちました。正直10年もやっていればアイディアは尽きて来ると思うので、いろいろと広げていきたいです。10年後には違うスタイルが確立できていればいいなと思います。
それから、「ものづくり」が好きですし、物質、物体が好きなので、一人でできる範囲で空間と物質との兼ね合い、インスタレーション的なものもやっていきたいなと思います。
具体的な予定はありますか?
具体的には、アルバムを完成させます。作業自体を年内に終えられるかどうかです。出せるとしたら2月か3月です。イギリスのレーベルなのですが、アルバムを出したらイギリスを中心にツアーをしようと言ってくれています。今はアルバムのことで頭が一杯です。
Text: Hiromi Nomoto