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シンケル・パビリオン

PLACEText: Kiyohide Hayashi

シンケル・パビリオンが現代美術作品を展示するスペースとして始動したのは2007年のこと。立ち上げたのはアーティストでもあるニナ・ポール。彼女はシンケル・パビリオンの運営だけでなく、展覧会のアーティストなどを決めるキュレーションも行っている。スペースはギャラリーのように作品販売を専門としておらず、展覧会の入場料を取っていないため、運営資金の多くをドイツで良く見られるクンスト・フェアアイン(美術協会)形式で得ている。それは一般の人々が協会(ここでの協会はシンケル・パビリオン)のメンバーとなり、年会費を支払うことで協会の企画運営を助けるもの。そのためギャラリーにありがちな作品販売に重きをおいた商業主義一辺倒の展示や、美術館でありがちな入場料収入を狙った来場者を増やすための通俗的な展示をここで見ることはない。見ることができるのは非常に質の高い展示なのだ。

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Photo: Thorsten Klapsch

今までシンケル・パビリオンで展示を行ったのは、ヨーン・ボッククリスチャン・ヤンコフスキーイザ・ゲンツケンなど国際的に活躍するアーティストたち。ガラス張りの小さな一室での展示となるため、空間を利用したインスタレーション作品や彫刻作品を見せるアーティストが多く登場している。

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Karla Black, For Another Purpose, 2012, Cellophane, Sellotape, Paint, Plaster powder, Powder paint, Nailvarnish, 160 x Ø445 cm, Installation view, Schinkel Pavillon e. V., Berlin. Photo: Nick Ash, Courtesy Galerie Gisela Capitain, Ko¨ln

スコットランド人アーティスト、カーラ・ブラックはその最たる例だろう。彼女は無駄無くデザインされた展示スペースの中心に、今にも壊れそうな歪んだセロファン製の巨大なリングを設置した。天井の照明に合わせて形作られた作品は、完全性を追求した空間に対して、脆さや形のくずれた様を美しく際立たせる。彼女はこの完成された空間に変化を持ち込み、作品と空間との共鳴を生み出すことに成功していた。

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