イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに

HAPPENINGText: Meiko Maruyama

展示は理想、美、そして儚さを、ビーズを使って成形された人間の様な形をした彫刻で表現している。一見、工業製品から成っている様に見える事から、実際はビーズと糸で形成されている事に気がついた時、作品はさらに壊れやすく、個人的な物ととれる。また、アーティストは宇宙船の様な一人乗りのカラオケの機械を展示している。

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「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」森美術館, 2012年 撮影:渡邉 修

イ・ブルは更に人型の彫刻や建築の形を使いサイボーグやユートピア(理想郷)の観念を探る。三つ目のテーマ「ユートピアと幻想風景」では来館者は床が鏡でつくられた部屋に入る事ができ、部屋の冷たい印象は展示された機械的な形や建築を真似た作品により更に高められる。アーティストは更に政治や韓国と北朝鮮の国境問題も、ユートピアと幻想風景の考えを反映し触れている。

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「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」森美術館, 2012年 撮影:渡邉 修

イ・ブルは一番新しい、2012年の作品を来館者に最後に提供する。「秘密を共有するもの」は大きな彫刻の作品であり、彼女の犬が嘔吐している姿を表している。しかし彼女の犬と吐いた物は以前の作品の様に、ビーズやアクリルミラー、プラスチックなどでつくられている。

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イ・ブル《ブルーノ・タウトに倣って(物事の甘きを自覚せよ)》2007年 ビーズ、ステンレススチール、金網、ポリ塩化ビニル、チェーン. 258 x 200 x 250 cm 所蔵:ギャルリー・タデウス・ロパック、ザルツブルク/パリ 撮影:渡邉 修 写真提供:森美術館

彼女自身の犬を作品の題材にし、作風はユートピアや政治、サイボーグなどから個人的なテーマに舞い戻っている。そして作品全体はビーズなど輝かしい物体で制作され、見ている者それぞれに訴えかける。アーティストの独創性、個人的なテーマ、そして来館者を裏切らない美しい作品が更に掘り下げられている事に、イ・ブルの未来の作品への期待が高まる。

イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに
会期:2012年2月4日(土)〜5月27日(日)
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー53階
主催:森美術館
後援:駐日韓国大使館 韓国文化院、在日本大韓民国民団中央本部
協賛:株式会社大林組、トヨタ自動車株式会社、Soo Seok Trading Co., LTD.、
   Ilshin Foundation、三建設備工業株式会社、新菱冷熱工業株式会社
特別協力:株式会社菱晃
協力:シャンパーニュ ニコラ・フィアット、ボンベイ・サファイア
https://www.mori.art.museum

Text: Meiko Maruyama

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