カールステン・ニコライ

PEOPLEText: Mitsuhiro Takemura, Katsuya Ishida

Perfect square」は、一つの正方形を構成するために必要な21枚の異なる大きさの正方形を組み合わせ作られた作品です。これは70年代後半にロシアの数学者である「A.J.W.ルジン」が発見した法則を元に作成しました。

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Perfect square, 2004. Glass, Aluminum, Wood, Rubber, 362 x 362 x 21cm, with Stage elements, 400 x 400 x 50cm

数学は自然の原理を知るために存在すると私は考えています。そのような思想の中で正方形は人間の美的感覚の象徴であり秩序を伴ったものです。私の作成のモチベーションとなるもの、それは自然科学への興味ですが、作品を見た方は非常に科学的だといいます。

しかしながら、その自然を理解する上で必要な科学というもの(それを秩序といってもいいのかもしれません)、それが私の作品のベースとなっているのです。

私は作品制作を通じて、自然の原理を探し続けているわけですが、その過程において、人々がどのように知覚するか?そしてどのくらいの深度で知覚が可能なのか?というテーマに突き当たったのです。
このように創作活動の中で90年代半ばに私は人間の可聴領域、不可聴領域について大変興味をもつようになりました。
数値上、人間の可聴領域を超えた非常に高い周波数の音を発生させ、その可聴・不可聴をテストすることを繰り返し行うことで新しい疑問が湧いてきたのです。

 音は本当に存在するのか?
 実は聞こえている音は人間の想像が産み出した
 イマジネーションの産物なのではないか?

そしてそれは私の作品のテーマでもある「音の可視化」ということに繋がっています。

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Telefunken, 2000. CD player, CD, Sony hiblack trinitron TV, Dimension variable

Telefunken」は、オシロスコープを使って音とビデオの関係について考察した作品です。
本作品はとてもシンプルな構造で作られています。映像信号の入力部分にオーディオの信号を入れることで、音に同期した平行な縞模様が生まれます。これが「音の可視化」というテーマで行った初めての実験でした。
このように意図されたミステイク、そこから出てくる思いがけなかった結果というものを私は非常に大切に考えています。

音楽を作る上でも、このようなミステイクから発せられる「Glitch」と呼ばれる音は私にとって非常にインスピレーションを与えてくれるものです。音源から生成されたビジュアルはモニターやテレビといった画像表示装置の可能性を広げるものであると私は考えているのです。

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Milch, 2000. Lambda print on aluminum, 60 x 50cm

Milch」は、可聴範囲外である低い周波数を発するスピーカーを牛乳が浸されたトレイの下に設置し、その揺れを見るという作品です。
低い周波数ではカオス的に揺れていた波が、徐々に周波数を上げていくことによって美しい文様に変化してくことが、認識できるようになります。

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Syn chron, 2004. Lightweight structure, Steel, aluminum, Laser projection, Sound system, Rubber, 1250 x 800 x 460cm

この作品「Syn chron」はこれまでの作品とは少し違っているものです。ベルリンで制作しました。非常に大きな作品で制作に2年という長い期間がかかったものですが、私のテーマである空間・光・音といったエレメントを総合的に含められた作品でした。

クリスタルのような幾何学的な様相で、一見パビリオン風な作品ですが、半透明な素材で作られているため作品の中の状況も確認できながら、外の様子も分かるというものです。光と音のバリエーションによって様々な様相を作り出します。

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スティーヴン・チータム
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