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第15回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Yu Miyakoshi

エンターテインメント部門・新人賞を受賞したのは2010年にiPhoneアプリで話題を集めた成瀬つばさの「リズムシ キャラクター」。タッチパネルを通じてターンテーブルを動かし、サンプリング音や楽器音を駆使したDJの音出しができるというユニークさがTwitterや口コミで広がり、あっと言う間に人気になった。
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iPhoneアプリ、リズムシシリーズの「ラップムシ」© 成瀬つばさ

作者は国立音楽大学を卒業し、現在は多摩美術大学大学院に進み、サウンド&メディアアートの分野で活躍。企業のプロジェクト等ではなく、プログラミングからイラストまで、全て一人の学生が手がけて人気を博してしまった、ということが最近の動向を反映している。また、ハイテクさと裏腹な鉛筆書きのイラストからは、まるで学校の教室でマンガを描いて「友達を驚かせてやろう」とでもいうように素朴な、けれども確かなエンターテインメント精神の発端を感じた。

エンターテインメント部門ではこのほかに勝本雄一朗の電子遊具「相転移的装置」、 Facebookで人気を博した「The Museum of Me」などが優秀賞に、ひらのりょうのアニメーションで鑑賞者を独特の世界に引き込んだテクノ民謡とモーショングラフィックスの実験プロジェクト「Omodaka」の「Hietsuki Bushi」が新人賞を獲得した。

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テレビアニメーション「魔法少女まどか☆マギカ」展示ルーム

アニメーション部門ではポスト・エヴァンゲリオンとも評されるテレビアニメーション「魔法少女まどか☆マギカ」が大賞に。作者は「化物語」「さよなら絶望先生」「荒川アンダー・ザ・ブリッジ」などを手がけた人気アニメーション監督、新房昭之。平凡な中学生が魔法少女として活躍するというありふれた「魔法少女もの」の枠を越えた感動が話題を呼び、深夜放送発の作品としては特異的なブームを作った。息もつかせぬ展開と作品の奥に潜む批評性は、従来のアニメファンのみならず、様々な文化フィールドの大人たちを惹き付けた。

このほか、アニメーション部門では川﨑博嗣の「鬼神伝」、沖浦啓之の「ももへの手紙」(2012年4月21日から全国ロードショー)、フランス人作家、マチュー・ヴェルヌリー、ポリーヌ・ドゥファシェル 、レミー・ポールによる「Folksongs & Ballads」などが優秀賞に選ばれた。

マンガ部門では地球外コロニーに暮らす少年の成長を丁寧に描いた岩岡ヒサエの「土星マンション」が大賞を受賞。このほか、スペインからパコ・ロカの「」、アメリカからアリソン・ベクダルの「ファン・ホーム - ある家族の悲喜劇」が、海外作品で初の優勝賞に輝いた。

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しりあがり寿「あの日からのマンガ」展示コーナー

同じく優秀賞に選ばれたしりあがり寿の「あの日からのマンガ」は、作者が連載している朝日新聞に、あの日=3月11日から毎日、自ら被災地に足を運んだボランティア経験を織り交ぜて描かれ、驚異的なスピードで発刊された。受賞は、日頃から様々な日常の局面を独特のユーモアとナンセンスで受けとめる作者の哲学が、震災という脅威を経てもなお貫かれ、脚光を浴びた瞬間だった。

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