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TWSクリエーター・イン・レジデンス・オープン・スタジオ トーキョー・ストーリー 2011

HAPPENINGText: Yu Miyakoshi

どこで生きるのか、何を望んで生きていくのかを、等身大の女の子の目線で見つめたのは台湾の作家、ルー・チーユン。2008年にカタツムリが巨大な家を背負って進んで行く姿をインスタレーションとして発表したアーティストは、東京でも、自分たちが「より良い」ものを求めて生きていくとは、ということについて考えた。

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ルー・チーユン「Where Is The Better Place To Live?」2012 © Tokyo Wonder Site

展示室の角に張られた蜘蛛の巣と、蜘蛛を描いたアクリル画。嵐が来れば飛んでなくなってしまうような儚い家を作り、また新たな場所を求めて何処かへ行く蜘蛛をモチーフにしたのは何故だったのだろう?『今の時代は、古いものと新しいものが混在しています。そして美しかった黄金時代や、遠い未来に憧れて、みんな「もっといい時代」へ行きたいと思い、常に生活に期待と想像を抱いています。蜘蛛は、そんな人たちが決して実在することのない美しい世界の幻想のために、快適で近代化された生活を喜んで捨ててしまえるのかもしれない、ということを想起させるのです。』

そんなチーユン氏に東京の印象をたずねると、『初めて東京に来た時は、皆、一生懸命働いて買い物をし、またお金のために一生懸命働いていて、とても大変そうだけど、大変なのか、楽しんでいるのか、どっちかわからない、ということを思いました。』と答えてくれた。若い世代の感覚を、時代に流されずに表現しているチーユン氏の作品の世界には、とても興味深いものを感じた。

東京の人ごみをわずらわしく思ったとき、ふと、旅行者のように東京を歩いたら清々しいだろうな、と思ったことがある。「トーキョー・ストーリー 2011」は、そんな風に東京を旅するような体験ができた展覧会だった。

2月に行われたインターナショナル・アドバイザー・トークでは、ゲストに招かれた舞台芸術家のオン・ケンセンが、興味を惹く考え方について語られていた。それはカルチュラル・スタディーズの研究者、ポール・ギルロイが提唱する「ローカルにいながらにしてグローバルな視点を持つ」ということだった。ケンセン氏は、グローバライゼーションが世界を均一にしていまうリスクも説きつつ、地球を惑星としてとらえ、地球のどんな場所にいたとしても、いつもつながっている意識を持つ、という考え方を教えてくれた。

ローカルな視点もあるけれど、グローバルな視点もある、東京のコミュニティに居ながらにして、そんなことができたらいいなと願い、そのアイディアを心にとめておきたいと思った。トーキョーワンダーサイトでは、年間を通してアーティストと交流できるイベントを開催している。また、クリエーター・イン・レジデンス・プログラムに参加するアーティストの募集も行っているので、我こそはと思うクリエーターの方は、ぜひ一度オフィシャルサイトのチェックを。

TWSクリエーター・イン・レジデンス・オープン・スタジオ
トーキョー・ストーリー 2011

会期:2012年3月10日〜4月29日 ※青山のみ28日まで
会場:トーキョーワンダーサイト本郷・渋谷・青山
休館日: 3月12日・19日・26日、4月2日・9日・16日・23日 ※青山のみ日、月曜定休 
時間:11:00〜19:00
入場料:無料
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 トーキョーワンダーサイト
http://www.tokyo-ws.org

Text: Yu Miyakoshi

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