第54回 ヴェネツィア・ビエンナーレ
HAPPENINGText: Toshiaki Hozumi
今回の企画展では、国別パビリオンとの連携を図る目的で、部分的にパラパビリオンを挿入設置された。ソン・ドン(宋冬)、モニカ・ソスノヴスカ、フランツ・ヴェストなどが、パビリオンをつくり、その中に別の作家の作品を展示したのだ。この試みにも効果的、非効果的と賛否両論の声があった。
さらに、この公式企画展には、若手や女性作家が多い一方で、非欧米系の作家が極端に少なかった。これも賛否両論の対象となった。自らの目の及ぶ範囲で手堅く展覧会をまとめ上げたという好評と、グローバリズム全盛の時期に目配りがなさすぎるという声があった。筆者としては、日本人作家が一人も含まれていないのが残念に感じつつも、まずはグルーバリズムを忘れ、手堅く仔細に自己の身の回りを検討すべきというクリーガーの意向は、展覧会全体を見ることである程度理解できた。
Navid Nuur
いくつもの賛否両論を巻き起こした今回のヴェネツィア・ビエンナーレだが、その賛否を引き起こした試みのひとつひとつに、「ポスト・グリーバリズム」という、社会の新しい連携への課題が含まれていたように感じる。グローバリズムの先に、ネイションをもとにしたコミュニケーションにいかに可能性があるのか、といったような。
Gigi Scaria
また、それは当然、ある特定のネイションや団体が、全てを代表するようなスペクタクルな表現は避けて、個人的な対応を要求する緻密な表現になっていくであろう。
いずれにしても、今回のヴェネツィア・ビエンナーレは、ポストグローバリズム、ポストスペクタクルを意識したために、「見応えがない」と批判されつつも、確実に時代を反映していたことだけは確かなようである。
第54回 ヴェネツィア・ビエンナーレ
会期:2011年6月4日~11月27日
会場:ヴェネツィア・ジャルディーニ、アルセナーレ他
http://www.labiennale.org
Text: Toshiaki Hozumi
Photos: Toshiaki Hozumi