パリ・ファッション・ウィーク SS 2012
HAPPENINGText: Shotaro Okada
ダミール・ドーマのショーはメンズと同じく、炭をランウェイの入口に立て掛けたセットで行なわれた。ショーは厳かでありながらもリラックスしたトーンで彩られ、肩のラインを軸に、布をゆるやかに落とした衣服が多く登場。色や素材感はとてもナチュラルで軽く、風に揺れ、とても優雅な雰囲気を醸していた。そして、時折現れるゴールドはショーに力強さを添えていた。ここで見られた「肩で羽織る」という着方は、西洋の衣服とは異なる在り方。このシルエットの在り方と、メンズと相似したコレクションのためか、彼のブティックに訪れた際に感じた、「無性別なエレガンス」という言葉が再び脳裏をよぎった。
また、アクリスのショーでは、縦に流れるシルエットを、巧みな素材使いによって、ミニマルかつグラフィカルに仕上げていた。
ジョン・フランケンハイマーによる、モナコでのカーレースを描いた映画、「グラン・プリ」(1966年)からインスピレーションを受けたという今シーズンは、スポーティで軽やかな印象。ファースト・ルックを飾った、鮮やかなグリーンのパーカー調のルックに心が躍る。カーレースにまつわる写真は、独特のユーモアでストライプやボーダーに変身。そのどれもが均衡に保たれ、上品な雰囲気。縦のシルエットは先のグラフィックやファスナー使い、パイピングやロングパンツで品やかに形作られていた。
身体と衣服の関係を、今シーズンの流れと照らし合わせると、衣服によって身体を誇張するというよりも、むしろ衣服を用いて身体に新たなタッチを加えたものが多く見られた。
例えば、ルッツは、ゆとりある新しい造形を求めた服を展開。肩のラインや襟の切返し、シンプルだが非対称なドレスなど、カッティングに独自のこだわりを見せた。蛍光ピンクは黒の透け感のある素材で覆われ、どこなくミステリアス。衣服が動くたびにシルエットは変化し、様々な表情を見せた。
また今回パリにて、初めてランウェイ・ショーを行なったオーディーは、柔らかく彫刻的なシルエットの服を発表。身体と衣服の隙き間をクチュールのテクニックを用い、デリケートに演出していた。色は明るい透明感に満ち、春夏らしい気分に見合っていた。
衣服を用いて身体に新たなタッチを加えた表現は、他に、アン・ヴァレリー・アッシュ、ギャスパー・ユルケヴィッチ、ジバンシィ、イッセイ・ミヤケなどで見ることができた。ここで各々を述べると、いささか長くなってしまうため、次のテーマに合わせて紹介したい。
また、シルエットの別の流れに、身体の部位を強調するボディコンシャスを、新たな解釈でリデザインする動きも目を惹いた。一見するとグラマラスだが、ディティールに引き算がしてあったり、優しいタッチが加えられている。アルズ・カプロルのコレクションでは、女性らしく柔らかいラインが描かれていた。
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