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ベンジャミン・グロッサー

PEOPLEText: Memi Mizukami

あなたの作品を見て、人々は何と言いますか? あなたの作品は誰にでもよく理解され、心を掴むものですか?

私の作品は、様々な反応を受けます。制作時に私が意図していたことをほぼ理解する人もいます。自分の経験を作品と結びつけて、私が決して考えつかなかった結論に達する人もいます。どちらの結果も私にとっては興味深いものです。どんな人でも作品から何かしら得ることができるように、私はどの作品にも沢山の入り口を作るようにしています。

whole800.jpgインタラクティブ・ロボティック・ペインティング・マシーン」を見つめるベンジャミン・グロッサー
「インタラクティブ・ロボティック・ペインティング・マシーン」

「インタラクティブ・ロボティック・ペインティング・マシーン」についてお伺いします。どのようにしてこのアイディアを思いついたのですか? そしてどのくらいの期間構想しましたか?

私は長い間、適応性のあるシステム、あるいは人工知能のシステムにアート作品を作らせるという可能性に興味を持ち続けてきました。作曲家として私は、譜面を書き音を奏でるソフトウェアを開発したことはありましたが、私の関心が視覚芸術、中でもとりわけテクノロジーへと移っていくにつれ、私は、人間の日々の体験がどれほどテクノロジーを介したものになりつつあるかについて考え始めたのです。携帯電話、検索エンジン、ソーシャル・ネットワーキング。これらのシステムはインタラクティブな作用を促進しながら、我々のニーズや欲求を予測し支援するものです。こうしたシステムは複雑性、あるいは知性の中で成長していきますが、その知性は、関わる者をどのように変えるものなのでしょう。そしてその知性は、自らの必要性のために自分の作品を作りうるでしょうか?

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上から見た「インタラクティブ・ロボティック・ペインティング・マシーン」

この最後の疑問が、「インタラクティブ・ロボティック・ペインティング・マシーン」を作るきっかけとなりました。私がデザインしたアート製造マシーンは、私のために作品を作るのか、それとも自分自身のために作るのか。機械の視点は人間のそれとどう違うのか。そして機械の視点は作品の中に、目に見えるものとして現れるのか。私のこの思想はシステムによって強められるのか、それともシステムの中に消えてしまうのか。言い換えれば、現時点ではまだ「テクニウム」の一例に過ぎないとしても、このシステムによって機械は生命を持つのか、それともこれは我々がシステムを擬人化して考えているだけなのか。

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「インタラクティブ・ロボティック・ペインティング・マシーン」のブラシ部分

こうした疑問を考えるために作ったのが、人工知能によって自分で体を動かし、自分で判断し絵を描く機械「インタラクティブ・ロボティック・ペインティング・マシーン」です。これは、周囲の音を聞き、何を聞いたかを絵を描くプロセス内に入力するというシステムです。周りに音をたてる人や物がない時には、他の多くのアーティストと同様にこの機械も自分自身に耳を傾けています。しかし他からの音を聞くと、それによって行動を変えるのです。ちょうど私たちが微妙に(あるいははっきりと)他の人の言うことに影響されていくのと同じように。

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頭部交換時に描かれた絵(2011)/油彩・キャンバス、10″x10″ © インタラクティブ・ロボティック・ペインティング・マシーン

私は長い期間、機械を作ろうと構想していました。しかし一旦作り始めてからかかった期間は1年半程度でした。

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