チン↑ポム

PEOPLEText: Yuko Miyakoshi

卯城:福島第一原発に一番近い畑に防護服とガスマスクのかかしを立てたのが「ウィズアウト・セイ・グッバイ」という作品です。

岡田:原発の付近には、人はもちろん居ない訳ですが、時々来る車の中に乗ってる人たちは、全部防護服を来た現場の職員で、そういう人達はほとんど、ほぼ死を覚悟してると思うのです。

卯城:なので、それへのオマージュとしてカカシを立てました。その畑は土壌も汚染されているし、もう誰も使用できなくなってしまった畑なのですが、そこを誰にも見られずに何かからずっと守り続けなければいけない。ひょっとしたら立ち入り禁止になって10年後にも、一人でそこに立っている——そんな使命感をおびたカカシです。

24.jpg
「ウィズアウト・セイ・グッバイ」(2011) © Chim↑Pom
Photo: Kei Miyajima Courtesy of Mujin-to Production, Tokyo

岡田:使命感であり、原発の犠牲者。

卯城:タイトルの「ウィズアウト・セイ・グッパイ」というのは、さよならなんか言わない別れ、といった感じです。

岡田:それからテント地に筆で書いた「ダーティー・ディーズ・ダーン・ダート・チープ」。もともとは「AC/DC」の曲名なのですが、「ジョジョの奇妙な冒険」という漫画の「スタンド」と言う、その漫画の世界では重要な役割のラスボス的なキャラクターの能力の名前です。その翻訳が「いともたやすく行われるえげつない行為」というのですが、それってもう、ズバリ、今の原発を指す言葉にぴったりだなぁと思い、その言葉をひたすら書き続けた作品です。

erokitelkibou.jpg
性欲電気変換装置「エロキテル」実用機「キボウ」(2011) © Chim↑Pom
Photo: Kei Miyajima Courtesy of Mujin-to Production, Tokyo

卯城:随分前に作った発明品の三号機です。エネルギー問題があり、前々から石油が無くなるとか、クリーンエネルギーだとか言われています。それで既存のエネルギーの代替品として、性欲を使えるのではないか。これはとんでもないエネルギーを秘めているぞと思って。それでスポーツ新聞の三行広告に「チ○ポム エロキテル」とか携帯の電話番号を書いておくと、かなりかかってくるのです。かかってくると、こっちで携帯が鳴る。そうすると電気が点く仕組です。
第一号機は普通に電球でやってみて、二号機はアメリカでのUSAバージョン。アメリカの場合は電球どころではなく、稲妻を発生させる装置を使って電話がかかってくると稲妻がバアッと散る。今回は原発のこともあり、停電もあったので、これはいよいよ実用に踏み切るしかないと思い、家庭用実用機にして「エロキテル」実用機「キボウ」という名前にしました。今機はかけてくると、展示会場内のあかりが20%ぐらい明るくなります。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE