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チン↑ポム

PEOPLEText: Yuko Miyakoshi

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「レベル7 feat. 明日の神話」(2011) © Chim↑Pom
Photo: Kei Miyajima Courtesy of Mujin-to Production, Tokyo

※2011年5月1日、渋谷駅に展示されていた岡本太郎の絵に原発事故を思わせる絵が付け加えられていたということが判明し、事件として取り沙汰された。今回はそのパフォーマンスの際に取り付けられたパネルの原画が展示されていた。

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この作品は岡本太郎さんの作品を継承しているとか、岡本さんへのオマージュといったことから繋がってきているのですか?

卯城:「明日の神話」は、パブリックアートとして国民的な壁画です。外で作品を制作・展示するときは、グラフィティにしろ、パブリックアートにしろ、美術好きな人が、作家が誰なのかとか、どういう美術史的な作品なのかという見方で見るわけではなくて、一般的に面白いかどうかとか、そういうところで色んな人たちに見られるわけです。なので、岡本太郎さんへの思いや、岡本太郎とチンポム、というよりも、「レベル7という事象と明日の神話」で構成しています。

岡田:ギャラリー内でやるより、ダイレクトに届くんですよね。外でやると。

卯城:「レベル7 feat. 明日の神話」というタイトルなのですが、リミックスでもコラージュでもサンプリングでもコラボレーションでもなく、正にフィーチャリングとしか言いようがなく、レベル7が明日の神話をフィーチャーしたというような感じがあります。意外と今までのアートには、そういう手法は無かったなと思っていて、フィーチャリングっていうのが気に入ってきています。

作品のアイディアはどのように着想を得るのですか?

卯城:渋谷とかで会議することが多いので、「明日の神話」を見ながら考えました。あれが広島、長崎から第五福竜丸をモチーフにした「被曝のクロニクル」だっていうことは皆分かっているので、ここに福島原発を足す…。あそこの空きスペースに設置できる…。しかも海…。そういう流れです。
今回の事故を考えるときに、クロニクルという歴史的な見方は大事だと思います。放射能や被爆は、日本人の中で、どこか20世紀の話になっていたような感じがあったように思います。でもその間も僕たちは原発に依存しつづけてきました。この作品は、放射能と深く付き合ってきたはずなのに、原発安全「神話」の中で被爆体験を過去化してしまった日本が、21世紀になってまた被爆してしまったことを表しています。それを美術史に沿って一般化しました。

設置したのは昼間だったのですか?

卯城:夜の九時と十時の間です。

人もいたのではないでしょうか?

卯城:もちろん。やり方としては、あの場所は棚になっているのでそこに立てかけました。転倒防止用に、壁画の右下を保護するアクリルボードを壁に設置している金具に合わせて絵に切り込みを入れて、アクリルボードの出っ張り部分でつっかけました。あとは絵の裏に一番粘着力の弱いマスキングテープを貼って、設置しました。最初から準備していたので、作業自体は手際よく進み、早く終えることができました。

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「リアルタイムス」(2011) © Chim↑Pom

卯城:福島第一原発の横の東電の敷地内に、市民に解放している展望台があります。今は立ち入り禁止区域になっているので入れない場所です。これは立ち入り禁止になる前に撮影したもので、正門のすぐ近くから40分くらいかけて歩いて展望台に向かうという映像作品です。タイトルは、新聞名を彷彿とさせる「TIMES」、リアルな時代という意味での「リアルタイムス」。「今」ということでの「リアルタイム」から着想しました。
展望台からは、崩壊して煙が上がっている建屋と、汚染水が流れ出ている太平洋が見えました。そこで白旗を出して、日の出からデザインされたという日の丸を書き込んで、日章旗などの放射状のイメージから日の丸を放射能のマークに変えていきました。そもそも、避難命令が出てからというもの、報道陣がそこまで入り込まなくなったことに違和感がありました。だって報道陣が入れないような場所で、同じ人間が働いているわけですから。でもニュース映像はずっと30キロ外からの映像を鮮明化しているだけだし、いったいそこはどうなってるんだという疑問がずっとありました。
僕たちが実際体験することで今回の展覧会の作品はだいぶ変わりました。明日の神話の作品で描いた建屋も、ニュースで見たものではなく、自分の目で見たものだというのが大事だと思います。

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