シンガポール・ビエンナーレ 2011
ロスリシャム・イスマイルのインスタレーション、「シークレット・アフェア」は冷蔵庫の中身を見せることで人々の興味を引きつける。ワインや、冷蔵庫にもかかわらず入っているポテトチップスの袋、そしてイチゴやチョコレート。冷蔵庫の上には香辛料が並び、冷凍室にはハムが入っている。この冷蔵庫は持ち主について何を物語っているのだろう?冷蔵庫には何が入っているのだろう?お気に入りの冷蔵庫はどれか?
シンガポール国立博物館とシンガポール美術館は、より伝統的な作品の展示会場となっている。シャオ・イノング & ミュ・チェンが制作した、巨大な布に様々な無名の紙幣を刺繍した作品は、イメージと象徴の力を彷彿とさせる。結局のところ貨幣とはそれ自体が典型的な力の象徴なのだ。
ロープドローイングを伴ったジュリアン・ゲーテの斬新なインスタレーションは精巧な幾何学空間をつくり出している。チェスのポーンを連想させる巨大な彫刻は、危険や恐れ、そして好奇心といった感覚を思い起こさせる。
ビエンナーレが開催されるたびに、シンガポールの新たな魅力が紹介されてきたわけだが、今年も例外ではない。シンガポール初の民間空港であるカラン旧飛行場が、50年の時を経て、今ビエンナーレの会場として使用される。空港の格納庫と管制塔がアーティストの感性を刺激する新たな背景をつくり出すのだ。例えば、ゴーシャ・ウダルチャクによる「フローズン・ドローイング」はガラスの上に描かれており、観客に作品として触れ合ってもらうと同時に、向こう側を覗き込んでもらうという重層的な楽しみ方を提供している。
シンガポール・ビエンナーレは、全てのクリエイター、そしてこのイベントに関わろうとする全ての人々に対して開かれている。理解しあうこと、そして一体になることがオープン・ハウスのあるべき姿なのだ。
Singapore Biennale 2011
会期:2011年3月13日〜5月15日
会場:シンガポール国立博物館、シンガポール美術館、8Q、カラン旧飛行場、マリーナ・ベイ
http://www.singaporebiennale.org
Text: Fann ZJ
Translation: Kazuyuki Yoshimura
Photos: Fann ZJ