アート・ドバイ 2011

HAPPENINGText: Mamiko Kawakami

政治情勢をテーマに掲げたこのブースへのビジターの反応はとても良かったとのアート・ドバイ関係者の話。 『今年のアート・ドバイは、この様な中東ほぼ全域に渡る不安定な情勢下で、意図せずとも今までと全く違うアプローチになった。』とアートスペースのアートディレクター、ソッシー・ディキジアンは答える。ディキジアンによれば、ビジターはその全く異なるスタイルのコレクションに大いに関心を示した。『アーティストにとって、この情勢に対し感情を表現する事は重要な事。特に中東地域は検閲が厳しい。今表現しなければ二度とチャンスはない、というようなアプローチだった。』とギャラリーの決断を語る。『革命に自ら参加したアーティストを多く抱え、ギャラリーとしてこのコンセプトを掲げてブースを出すことに全く異存はなかった』と。

アートスペースに展示の作品のほとんどが、アート・ドバイオープン3週間前を切ってから作られ、その開幕当日に会場に届けられた。アーティスト達は中東の政情不安定を作品に組み込みたかったからだ。『だから想像がつくと思うが、作品を宣伝する時間も全くなかった』とディキジャンは語る。

またディキジャンは『中東アートは変革を遂げており、アーティスト達は、いよいよ箱の外を考え始めている』と指摘する。あわせて中東のアート市場も拡大しつつあり、人々も教養を持ちそれぞれが研究した結果、様々な形式のアートを受け入れる様になってきた。

アート・ドバイ初回、2003年にはドバイからの出展はアートスペースを含め3ギャラリーだけだった。ドバイの開拓ギャラリーとして非常に重要な役目を果たしたその後、同ギャラリー5年連続の出展を通して見たアート・ドバイの進化を、アートディレクターのディキジャンはこう語る。『今年は沢山のトップコレクター、評論家、世界各地の美術館長が来ていた。』『以前は中東のアートシーンはその地域内だけに注目していた。でも今では、世界が中東のアートシーンに注目している。今年のアート・ドバイが良い例。』と、このイベントが中東と世界のアートの交流点となっている事を指摘する。

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‘Enlightenment’, Nadim Karam, 200 x 360 cm, Mixed Media on Canvas 2010. Courtesy of Ayyam Gallery

アヤム・ギャラリーもまた世界的スポットライトを浴びている国からの出展。2006年にシリアに一号ギャラリーを設立してから、アヤムギャラリーは現在ドバイ、カイロ、ベイルートとその拠点を広げている。地域一体の反政府ムードが高まる一方で、レバノン人アーティスト、ナディム・カラムの「エンライトンメント(悟り)」はユートピアを描いている。カラフルな生き物の上に2人のキャラクター。これは現代社会にかわるがわる現れる、現実と非現実要素を描いている。

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