アート・ドバイ 2011
HAPPENINGText: Mamiko Kawakami
『アート・ドバイは単なるアートビジネスのイベントではない。来場者が参加できるワークショップやアーティストによるツアーも企画されている。今年初めてDXBリテールストアーというコーナーを設け、イベント限定デザインのドバイ土産にぴったりのアートも販売されている。』とディレクターのカーヴァーは語る。
Lucy Mackintosh, Lausanne. Photo: Charlie Koolhaas
アートとお金、この切っても切れない縁はアート・ドバイでより明らかなものとなる。イベント後のレポートでは、3,500ドルから15万ドル(約30万から1,200万円)もの高額を付けた作品が数々あったとの事。
ドバイのトラフィック・ギャラリーでは出展の40作品が合計で10万ドル(800万円)以上の売上を記録。その出展作品一つは、サウジアラビアのアーティスト、アハメッド・マテールの「Evolution of Man series(人類の進化シリーズ)」。
今年の高額作品ランキングに入るこの作品は、開幕前にサウジアートコレクターが3万ドル(240万円)で購入。
‘Evolution of Man’, Ahmed Mater, 79.2 x 59.4 cm, 2010. Courtesy of Ahmed Mater
『私にとってより重要なのは、価格ではなくこの作品を買ったコレクターだ』とマテールは語る。『より多くのサウジ人が、この作品の様にデリケートな問題に対し強いメッセージを発しているようなアートをコレクションとしている事は素晴しいと思う。』
「Evolution of Man」 シリーズはガソリンポンプが頭に銃を当てた人間に変化していく4枚の写真からなる。この奥が深い作品には実に考えさせられる。『この作品が発するメッセージは一つだけではない。それぞれがそれぞれのメッセージを感じて欲しい』とマテール。
サウジアラビアでは、自殺は重罪、ダーウィンの進化論は異端とされる。それに対し、サウジのブロガー、アハメド・アル‐オムランは『マテールは進化論を信じている。だが、彼にとっての進化論は、適応者の生き残りという意味ではない。進化は時には絶滅をももたらす』と語る。
サウジアラビアは、80年前の建国直後の石油の発見から目覚しい変化を遂げた。オイルマネーは、小さな漁村からなる王国をわずか数年間で世界トップレベルの裕福な国にした。サウジ国民の生活にもその変化は極端なものだった。小さな農村に生まれ、アーティストである傍ら医学を学ぶマテールも『今はこの不気味な石油文明の息子なんだ』と言う。
そう感じるサウジ国民は彼だけではないはず。『オイルマネーは国の施設やインフラを整えた。がそれは必ずしも国民の知性を深め、考えを現代化する為に使われたわけではない』とサウジ・ジーンズのブロガー、アル‐オムランは語る。
もともとこの作品のタイトルは「Evolution of Man, What Darwin Didn’t Know(進化論、ダーウィンの知らなかったもの)」だったそうだ。
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