THE PHOTO / BOOKS HUB TOKYO 2011

HAPPENINGText: Yuko Miyakoshi

Gallery 360°はホンマタカシのシルクスクリーン作品「M」シリーズ特集。写真をシルクスクリーン版画に起こし刷ったという作品は、普通のプリントとは違った味わいがある。今回販売されていた新しい写真集は表紙に「M」のミスプリントを使用したという大胆な発想の一冊。本物の作品の一部を切りとって表紙にしているので幾つものパターンがあり、500部限定。しかも前日に刷り上がったばかりだったせいか、シルクスクリーン独特の匂いがぷんぷんしていた。こんな作品に出会えるのもフェアの醍醐味だ。

honma.JPG

“東京”から生み出されるアート、デザイン、カルチャーを世界に発信していく「TOKYO CULTUART by BEAMS」で紹介されていて気になった一冊は「saji」。一見するとアートブックか絵本かと思うのだが、実は「今日の食事が10年後の私の体を作る」というメッセージを伝えるレシピブック。フォトグラファーのMIHOが写真からアートディレクションまでを一気に手がけていて、コントリビューターが寄せたイラストも可愛い。数行程度で終わる簡単なレシピをのせて、食事の大切さを伝えている。

beams.JPG

このほか、「1_WALL」展で若手発掘に一役買ってきた「Guardian Garden」、名著を取り揃えていた「SUPERLABO」、日本を代表するフォトマガジン「PHOTO GRAPHICA」、良書の発刊で知られる青幻舎等が厳選した作品を紹介していた。

talkshow.JPG

当日は写真家の小山泰介や鷹野隆大、ライターの山内宏泰を招いたトークショーや、「Words Without Pictures」日本語版発刊に向けての公開シンポジウム、アーティストと直接交流することができるブックサイニング(サイン会)なども開かれた。写真家をはじめ出版社、編集者、そしてオーディエンスまで巻き込んだコミュニケーションの場が提供されるのは本当に有意義なことだと思う。今回のフェアを訪れてわかったことで、率直に良かったと感じたのは、まだ震災の爪あとも不安も残る中、アーティストがあらゆることを汲み悩みながらも、いつもどおりに制作を始めていた、ということだった。トークショーでは震災という脅威を受けての写真の役割や復興への関わりについても語られた。コミュニティで交流やディスカッションが繰り返されれば、それだけ集まった力は強くなる。新たな写真のコミュニティが生まれたことに感謝しつつ、なにか糧のようなものを得て帰途についた。

THE PHOTO / BOOKS HUB TOKYO 2011
会期:2011年4月2日(土)・3日(日)
会場:表参道ヒルズ 本館地下3F スペース オー
出展団体:亜洲中西屋、artbeat publishers+ G/Pgallery、between the books、Bueno! Books、Gallery 360°、Guardian Garden、Heuristic、HUgE、風とロック 、リトルモア、NADiff、Photo Gallery International、PHOTO BOOKS UNION、PHOTO GRAPHICA、photographers’ gallery、RAT HOLE GALLERY、青幻舎、SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS、SUPERLABO、Taka Ishii Gallery、TOKYO CULTUART by BEAMS、Youngtree press Ltd.
https://www.photobookshubtokyo.com

Text: Yuko Miyakoshi
Photos: Yuko Miyakoshi

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
アドリアン・M/クレール・B
MoMA STORE