小野寺 唯 & CELER

PEOPLEText: Mariko Takei

活動拠点が日本とアメリカで離れていますが、制作はどのように行われたのでしょう?

Y:今回の制作は基本的にサウンドファイルの交換によって行っています。最初にお互いの断片的な素材を交換しながら、少しずつ全体を形作ってゆく感じです。この様なインターネットを介したコラボレーションによって、過去の音楽家達には困難であったとされる作業プロセスを用いて新しい価値を生み出す可能性を探ることができるのは、社会を反映させた現代的なアプローチとしてとても刺激的な試みだと思っています。

C:コンピューターとフィールド・レコーダーを使って沢山の音を録音しました。それをそれぞれがメールで送り、リミックスし、ミックスし、全部をまとめました。長い時間を要しましたが、割と簡単な作業です。僕たちには音に取り組む十分な時間がありましたし、受け取った音は常に新しいものだったので、受け取る前にその音がどういったものなのかという前知識もありませんでした。それがとても刺激的で、じっくりと作業するだけの時間もあったので、音が独自のものを生み出していくのにまかせました。

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Yui Onodera & The Beautiful Schizophonic “RADIANCE”

それぞれの活動でも他のミュージシャンやサウンドアーティストとコラボレーションを行っているようですが、どんなアーティストとどんなコレボレーション作品を手掛けていますか?

Y:去年はポルトガルのサウンドアーティストのザ・ビューティフル・スキツォフォニックとのコラボレーションアルバム「ラディアンス」がフランスのレーベルよりリリースされました。彼はこのシーンでは評価の高いポルトガルのレーベルからのリリースで広く知られているアーティストで、電子音響でありながらもメランコリックで叙情的な音が特徴的です。コラボレーションアルバムでも互いを特徴づける要素がうまく溶け合っていて、どちらのソロ作品とも一味違う独特の作品に仕上がっています。

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Mathieu Ruhlmann + Celer “Mesoscaphe”

C:他のアーティストでは唯一カナダのマシュー・ラフルマンとだけ一緒に作品を手掛けました。でも、このコラボレーションは、主題は異なるけど、今回のとすごく同じような感じの共同作品です。マシュー・ラフルマンとの最初のコラボレーション作品は、潜水艇の旅をベースにしたもので、潜水艦にいるような体験の再現を意図しています。2枚目のコラボレーションは、南アメリカからポリネシア諸島まで浮かんだ筏のコンティキ号の物語をベースにしています。これらのアルバムでは、全てのフィールド・レコーディングの背景と、旅を再現するのに、水が主要な素材となっています。今後は他のミュージシャンとも一緒に制作ができればと思っています。現在は、日本人アーティストのミコ(PLOP)とソロでコラボレーション作品を手掛けていますし、唯とも一緒に制作するかもしれません。

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+LUS

ライブパフォーマンス、アルバム制作などの他にもアート活動など何か特に取り組んでいることがあったら教えて下さい。

Y:去年より、音や映像、プロダクトから空間まで、メディアを問わない多岐にわたるデザイン領域を等価に捉えたミクスドメディアとしての表現というのをコンセプトとした、「+LUS」というアートグループを組織して、サウンドインスタレーションにも取り組んでいます。今年の2月に最初のインスタレーションを東京で発表しました。メンバーはそれぞれ個人での活動も並行して行っているので、なかなか全員で集まるのが難しいのですが、今後もプロジェクト毎に組織的な活動を展開させてゆくつもりです。

C:ただ純粋にアルバムリリースのプロセスとして、大抵毎日、アルバム制作の作業をおこなっています。でも、写真も好きで、古い写真の復元にも沢山時間を費やしています。写真は新しいのもあるし、古いのもありますが、最終的には、自分のレーベルから写真集を出版したいと思ってます。あと、古い8ミリ映像の修復や、詩の転写、ノートから書き写しなどもやりますね。現在は、日中の仕事がないので、こうしたことで自分の時間を費やし、起きているときは、アーティスティックなことや音楽のマネージメント関連のことをやってます。

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