ミン・ウォン展「ライフ・オブ・イミテーション:鏡映」

HAPPENINGText: Rachel Alexis Xu

他の3つの部屋を使ってミン・ウォンは、ミスキャストと模造という手段を用い、自国の映画という概念の再構築を試みている。P・ラムリー、ダグラス・サーク、ウォン・カーウァイという3人の著名な映画監督の作品を素材に扱い映画ファンを挑発する。違和感に満ちたこれらの模造作品を鑑賞すると、言いようのない混乱が頭を支配する。

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ウォン・カーウァイの「花様年華」からの1シーンでは、主役である男女が両方とも同じ女優によって演じられる。同じシーンを演じた3つのテイクが、3台のスクリーンに同時に映し出される。片言の広東語が反響して生み出す不協和音の中でこの作品を鑑賞していると、ほとんどシュールとも言える感覚にとらわれる。この作品で最も強く打ち出しているのは、文化の必須条件としての言語だが、深く掘り下げてゆくとそれ以上に我々が感じさせられる疑問が見えてくる。明瞭な発音というものは、我々が文化と呼ぶものに対してはほんのうわべに過ぎないのではないかと。

本展「ライフ・オブ・イミテーション」は、過去と現在、現実とフィクション、記録されたものと新たに生み出されるもの、それらの境界についての展覧会である。痕跡を辿り、疑問を投げかけ、そして恐らくは、アイデンティティのルーツについていくつかの答えを示す展覧会なのである。多くの人が無視している領域に踏み込み、我々のアイデンティティの複雑さを露にする。アイデンティティというものがどれほど頻繁に、無意識のうちに複雑に織り合わされ、個から全体へと結びついていくものなのかを明らかにするのである。

ミン・ウォン「ライフ・オブ・イミテーション」
会期:2010年4月22日~8月22日
会場:シンガポール・アート・ミュージアム
住所:71 Bras Basah Road, Singapore 189555
TEL:+65 6332 3222
https://www.singart.com

Text: Rachel Alexis Xu
Translation: Shiori Saito
Photos: Rachel Alexis Xu

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